ファッション関係 宝石

(続)新☆誕生石!(10月:オパール)(2)

投稿日:2022年12月16日 更新日:

 こんにちは、みちょるびんです。

 前回の「(続)新☆誕生石!(10月:オパール)」に引き続き、今回も、日本人女性が好むと言われている10月の誕生石「オパール」を取り上げたいと思います。

 日本人のオパール好みは、その例を世界に見ない。数年前のオーストラリア・オパール流行の最盛期(1962年当時)には、オーストラリア産オパールの実に75%、当時にして約10億円以上のオパール(おもに原石)がオーストラリアから買われた。現在はメキシコ・オパールがこれに代わったが、これも産出の80%以上が日本向けの需要である。

              「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)

 青、緑、赤などの光が混じりあって美しく輝くオパールは、日本の女性に大へん好まれる石のようです。オパールの指輪をはめた婦人は実に多く見かけられますし、宝石店、デパートの宝石売り場など、どこでもオパールがとくに目立っているようです。

                 「宝石」(崎川範行著、1963年)(118頁)

 以上のとおり、宝石専門家でいらっしゃった近山晶氏と崎川範行氏の証言により、‘日本人女性のオパール好き’は1960年頃をピークに迎えていたということは確実と思われます。

 オーストラリア産オパールの75%が日本に輸出されていたという具体的な数値の裏付けがあり、また、オパールの指輪をはめた婦人をよく見かけた、宝石店、デパートの売り場などでもオパールが目立ったという、実生活の中における体験談もある。
 これは心強い。
 なんとなく、みちょるびんが‘昔はオパールが人気だった’という風に感じていた肌感覚は正しかったということになります。
 それが証明されたことが、みちょるびん的にはうれしい♪

 さて、日本における高度経済成長は、実質経済成長率が年平均で10%前後を記録した1955年頃から1973年頃までを言うそうなので、オパールの爆発的な人気は、この高度経済成長期とバッチリ重なっていると言ってもいいのかも知れません。
 またみちょるびんは「80年代・90年代は、日本が、オーストラリアからのブラック・オパール最大輸出国であった」という記事をネットで見たのですが(「新☆誕生石!(26:10月の誕生石)」)、1980年代後半から1990年代初頭と言えば、日本がバブル景気を迎えていた頃。
 ここでも、好景気とオパール人気が重なっています。

 宝石は、経済的に余裕がなければ購入しない商品の代表格とも言えますので、むしろ好景気の時に宝石が売れるのは当然の原理。
 しかし、宝石にはダイアモンドだってあるし、3大宝石のルビー・サファイア・エメラルドだってある。
 こういった‘定番’とも言える宝石を差し置いて、特にオパールが人気だったというわけですから、他に何か理由があるはずです―――。

 もちろん、これらの宝石に比べると安価で手に入れやすかったということはあるのだと思いますが☆

 オパール人気の背景の一つとして、ファッションの変化についても、考える必要があるかも知れません。
 高度経済成長以前は日常的に生活着として着用していた和服が、高度経済成長期以降は影を潜めていくという状況がありました。
 それは生活スタイルの変化に伴うものだったのでしょうが、その結果、‘日常的’だった和服は、‘非日常的な盛装’という位置づけのものに変化していったのだそうです。
 それは決して衰退ということではなく、逆に、女性にとっての人生の節目となるような重要な出来事――結婚、出産、子供の入学等――の際には、和服に袖を通すことが推奨され、それが女性たちの幸せであるかのような広告や記事がその時代に見られたらしい。

 確かに、みちょるびんの子供の頃は、周囲の大人たちは、結婚式などの特別な晴れの日には和服を着ていたのを覚えています。

 オパールは、洋装・和装のいずれにも合わせやすそうですし、そういうところにもオパール人気の秘密が隠されているのかも知れません。
 帯留めに宝石が使われることもあるので、帯留めとの関係性も気になるところ。

 ウィキペディア「帯留め」によると、日本の上流社会では、日本が欧風化していくに当たり、華やかな西洋の宝飾品に対抗する手段として、戦前より「きものの礼装のときは帯留めや指輪に宝石を身に着ける」ことが行われていたそうです。
 留袖に用いる帯留の宝石は、ダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルド・真珠の5大宝石もしくはアレキサンドライト・ヒスイを加えた七大宝石で、振り袖用としては、ルビー・真珠・オパール・珊瑚・金・銀・七宝などがふさわしいとされたのだとか。
 一方、一般社会では、諸説あるようようですが、礼装に帯留を使用する場合は、宝石や、鼈甲、金銀蒔絵のものがふさわしいとされているようです。

 因みに、京都の骨董屋「てっさい堂」の貴道裕子さんが収集された帯留めの本「伝えたい日本の美しいもの 貴道裕子のおびどめ」(貴道裕子、2001年)にある帯留めを見ると、全体的にマットな質感で落ち着きのある素材――宝石でいうと、真珠、ヒスイ、メノウ、琥珀、水晶、オパール、べっ甲、サンゴといったものが多いという印象。

 ところで、NHKや民放がカラーの本放送を開始したのは昭和35年(1960年)なのだそうです。
 昭和43年(1968年)はまだカラーの世帯普及率は4.4%でしたが、昭和49年(1954)年にはカラーが85.8%、白黒は48.1%と完全に逆転し、急速にテレビのカラー化が進んだというデータもあるようです。
 さらに昭和51年(1976年)には、カラーテレビの普及率は94%にも上っていたとのこと。
 なお、視聴率で言うと、1963年12月31日放送の第14回NHK紅白歌合戦では81.4%という脅威的な数字を打ち出しており、これは視聴率の歴代1位ということのようです。

 社会現象を巻き起こす流行の源として、テレビの影響力も見過ごせないように思います。
 現在はインターネットが発達していますが、昔は情報源が限られていました。

 だからやっぱり、テレビでオパールを大々的に取り上げただとか、あるいは大人気の女性有名人にオパール好きの人がいたとか、そういう影響があったんじゃないかなぁと、どうしても、みちょるびんはそう思うのです。

                             以上、みちょるびんでした!

【参考】
<報告2>衣服をめぐる人間との関係 ――現代社会における和服の変容より
          (公益財団法人京都服飾文化研究財団 研究員 小形 道正著、2020年)
家電の昭和史テレビ」(一般社団法人 家庭電気文化会HP)

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