こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」「アレキサンドライト」「ルビー」「スフェーン」「スピネル」「ペリドット」「サファイア」「クンツァイト」「トルマリン」に続く、第26弾!!
オパール
「オパール」の名前は、この石が美しく光ることから、ラテン語で‘貴石’を意味する「opalus」に由来します。
オパールの持つ独特なこの輝きは、「遊色効果」と呼ばれています。
オパールは、石の背景の色「基調色」(一般の色石でいう地色)によって、分類されます。
基調色がブラックからダーク・グレーの「ブラック・オパール」、白色の「ホワイト・オパール」、無色で遊色効果の強い「クリスタル・オパール」、無色で遊色効果の弱い「ウォーター・オパール」そして、オレンジの「ファイア・オパール」です。
研磨石の一部に母岩を持つものは「ボルダー・オパール」と言われます。
みちょるびんは、宝石に興味を持つまで、「オパール」と言えば「ホワイト・オパール」といった感じで、「ブラック・オパール」などの存在を初めて知ったのは、90年代半ば頃でした。
そんな調子だったので、ちょうど日本のバブル経済にあたる「80年代・90年代は、日本が、オーストラリアからのブラック・オパール最大輸出国であった」という記事をネットで見て、驚きました。
しかし、「昭和レトロ」と呼ばれるジュエリーから想像できるように、「オパール」(特にホワイト・オパール)は、「ダイアモンド」「ルビー」「エメラルド」「サファイア」の4大宝石、「クリソベリル・キャッツ・アイ」、「ヒスイ」や「真珠」とともに、日本人に愛されていた宝石だったという印象を、みちょるびんは持っていました。
だから、‘宝石鑑別の権威’と言われる近山晶氏の書籍にある記述を見て、妙に納得したところがありました。
日本人のオパール好みは、その例を世界に見ない。数年前のオーストラリア・オパール流行の最盛期(1962年当時)には、オーストラリア産オパールの実に75%、当時にして約10億円以上のオパール(おもに原石)がオーストラリアから買われた。現在はメキシコ・オパールがこれに代わったが、これも産出の80%以上が日本向けの需要である。
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
近山晶氏のこの著書は50年(!)も前のもので、オーストラリア産オパールの最盛期だったという昭和37年(1962年)と、‘現在’(書籍の出版年:昭和47年頃?)の当時の様子がわかる貴重な資料のように思います。
やっぱり、(少なくとも)昭和40年前後に、オパール人気の時代があったんですね!
以下3つの記述は、バブル経済の終わり頃(あるいは終わった後)に書かれた書籍からの抜粋です。
‘バブル期’のオパール人気を受けたコメントも一部あるように思われますが、「オパールが日本人に好まれる理由」を各々分析されているところが面白いので、ご紹介します。
オパールは日本人が好む宝石だそうで、オーストラリアとメキシコの世界二大産地の主要な輸出先は日本となっている。・・・オパールはSiO₂に水が加わった鉱物であり、非晶質である。ウェットな心情をもつ日本人に好まれる理由がわかるような気がする。
「楽しい鉱物図鑑」(1992年、堀秀道著)
オパールは、ひすいとともに日本女性に大変愛されている宝石です。その遊色のきらびやかにもかかわらず、オパールにはもろくて、柔らかく、割れやすいという特徴があります。華麗でありながら弱々しいという感じが魅力となって、ロマンチックなムードを好む日本女性の心を惹きつけてきたのかもしれません。
「宝石の実用知識」(1995年、川上周二著)
硬度は5.5から6.5。石に5~10%の水の分子が含まれているため、他の貴石と比較すると、硬質感のない独特の柔らか味を醸し出す。昔から日本人がオパールを真珠と並び愛してやまなかったのも、そんな柔らかさがもたらす優しい世界に魅了されたからかもしれない。
「全面改訂版 プロが本音で語る 宝石の常識」(1999年、岡本憲将著)
みちょるびんは、「ブラック・オパール」は華やかで個性的なイメージがあり、バブル期に好まれたと聞くと「いかにも!」という感じがするのですが、一方の「ホワイト・オパール」は、白を基調とした淡い色合いが、優しい印象を受けますし、和服にも合っていたのではないかと思います。
宝石が西洋から日本に入ってきた当初から、一番人気は変わらず、ダイアモンド、ルビーだったそうなので、そういった高価で、キラキラした輝きのある宝石への憧れもあったのだろうと思います。
しかし、日本人女性は、元々、サンゴやヒスイ、真珠、べっ甲というような、品のあるシックな美しさを身近なものとしていたので、慎ましさの中に華やぎのある「ホワイト・オパール」は、受け入れやすかったんじゃないか、そんな気がします。
さて、露木宏氏が、書籍「詳説・日本の宝飾文化史」(2019年)の中で、いつから日本でオパールがジュエリーに用いられてきたのかを、調べられていましたので、簡単にご紹介します。
我が国では、現代に伝わるジュエリーがごくわずかしかないため、露木先生は、当時の雑誌や新聞などの宝飾品広告を活用することで、日本の宝飾品の実態や遍歴について分析・研究をされています。
オパール初登場の広告は明治24年(1891年)なのだそうで、明治29年と31年にもオパールを用いた指輪が紹介されているそうです。
オパールの流行が始まったのは、明治30年頃らしく、当時の雑誌に、流行の理由として「不思議な光彩と、昼と夜で色が変わるところが、珍奇を好む流行社会にもてはやされる」と書かれているとのこと。
当時は、オーストラリア産のホワイト・オパールが主流だったようで、オパールが広く庶民階級にまでいきわたるのは、大正時代になってからなのだそうです。
また、露木先生によると、国産オパールを宝飾用に発売した会社が、明治後期にあったのだそうで、同社が取り扱ったのは、主に福島県宝坂産のものだったそうです。
明治38年頃からこのあたりでは宝石品質のオパールが採れることで知られていたのだそう。
「楽しい鉱物図鑑」の著者・堀秀道氏によると、宝坂産の大部分は卵の白身状なのですが、まれにメキシコ・オパールのような美品を産するとのこと。
なお、国産オパールでジュエリーを作成・販売していたその会社は、残念なことに、その後10年くらいで廃業したとのことです。
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「楽しい鉱物図鑑」(1992年、堀秀道著)
「宝石の実用知識」(1995年、川上周二著)
「全面改訂版 プロが本音で語る 宝石の常識」(1999年、岡本憲将著)
「詳説・日本の宝飾文化史」(2019年、露木宏著)