こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」「アレキサンドライト」「ルビー」「スフェーン」「スピネル」「ペリドット」に続く、第23弾!!
サファイア
本来、純粋な鉱物種「コランダム」は無色ですが、含まれる微量元素の違いによって、コランダムでは7色全ての色が生み出されます。
コランダムの中でも、赤い色の石は「ルビー」、その他のものは「サファイア」と呼ばれ、「サファイア」と言う時は、一般的に青色の石のみを指します。
そして、他の色は「ファンシー・サファイア」として区別されます。
ファンシー・サファイアを言う際は、頭に色名付けて、例えば無色なら「ホワイト・サファイア」という風に呼ぶことになります。
ただし、ファンシー・サファイアの中で、1色だけ、特別に名前が与えられているものがあります。
ピンキッシュ・オレンジからオレンジピンクの色の「パパラチャ」です。
パパラチャの色とされる色の範囲は、実は時代によって変わってきたところがあり、イエローイッシュ・オレンジからオレンジィ・レッドであれば、全ての明度と彩度のものを「パパラチャ」としていたこともあったそうです。
しかし、今日では、「パパラチャ」の色の範囲は、より狭く限定されているのだそうです。
そういえば、1995年頃、米国のミネラルショーでみちょるびんが勧められた「パパラチャ」は、まるで海に沈む夕日のような、パンチのあるオレンジィ・レッドをしていました!
ただ、その時は、みちょるびんが図鑑で見た色とは違うと思い、見向きもしなかったんですよね。
なるほど、そういう経緯がありましたか・・・。
「パパラチャ」はスリランカの公用語の1つ‘シンハラ語’で「蓮の花」を意味します。
この特別な蓮の花の色をしたサファイアは、以前は、スリランカだけで産出されていたのですが、後にアフリカ東部の鉱山でも、同じ色のものが採集されるようになり、「パパラチャ」の定義についての論争が起こったそうです。
つまり、スリランカ産のものだけをそう呼ぶのか、あるいは、その色味のものであれば「パパラチャ」と呼んでもいいのか―――。
今日、「パパラチャ」は‘ピンキッシュ・オレンジの色を持つサファイア’を指す国際的な用語となっており、高品質なルビーに匹敵する価格で取引されています。
さて、「サファイア」の名前の由来については、その語源は定かではないのだそうです。
おそらくサンスクリット語の「Sauriratna」(サターンの石)がその初めであり、ギリシャ語では「Sappheiros」で、そしてラテン語の「Sapphirus」となったと言われていますが、いずれも「青色」を意味しています。
古代に「サファイア」と呼ばれていたのは、同じく青い色の石である「ラピスラズリ」であったという説もあり、その辺については、後日掲載する予定の、12月の誕生石「ラピスラズリ」のコーナーで触れたいと思います。
古代ペルシャでは、大地は巨大なブルー・サファイアの原石に支えられており、「その色が天蓋に映るために空は青いのだ」と信じられていたそうです。
そんな神秘的な、深みのある青色を示すサファイアは、神聖なる石とみなされ、12世紀以降、キリスト教の聖職者の指輪に用いられてきたと言われています。
青色には、トパーズやタンザナイトなどの石にもありますが、美しいサファイアのブルーは、こうした宝石において、‘色の基準’とされています。
7月の誕生石「ルビー」のコーナーでもご紹介しましたが、天然コランダムは、他鉱物であるルチルが、細い針状の結晶となって内包されていることが多く、この内包物が顕著に発達した原石を、適切な方向にカボションカット(半球形に丸く研磨)にした場合、「アステリズム」効果を示すことになります。
いわゆる「スター・サファイア」です。
6条の光彩が一般的ですが、中には、12条のスターを呈するものもあるそうで、ルチルにヘマタイトを加えた2種類の内包物が、わずかに違う方向で配置された場合に現れるのだそうです。
「アメリカ自然史博物館」には、モルガン・ティファニー・コレクションとして「インドの星」と呼ばれる543カラットもあるスター・サファイアが展示されていますが、近年、続々と、その記録を塗り替える「スター・サファイア」が発見されています。
世界最大とされていた、2015年に発見された1404.49カラットの「アダムの星」の記録を打ち破る「セレンディピティ」も現れました。
「セレンディピティ」は、2020年に民家の裏庭の井戸から発見されたもので、宝石鑑定協会の認証を受けるまで、1年以上かかったのだそうです。
その重さは、約510キロ、250万カラットという桁外れ。
品質自体は、さほど優れたものではないようではありますが、それでも、これまで発見されたスター・サファイアの原石の中で最大と言われています。
この大きさには、度肝を抜かれますね!
これら「インドの星」「アダムの星」「セレンディピティ」は全て、スリランカで産出されたもの。
「パパラチャ」の原産国でもあるし「恐るべし、スリランカ!」です。
古代より、宝石は、不思議な力が備わっていると考えられ、人々は宝石を護符として身につけてきました。
中でもスターが現れる神秘的な「スター・サファイア」は、護符の中でもパワーが強いと考えられ、それが他人の手にわたっても、最初の持ち主に良い影響を及ぼし続けると考えられているそうです。
そして、災いや邪眼をも寄せ付けない石とされています。
この法則で行くと、ご自宅の裏庭で見つかったという「セレンディピティ」の持ち主の方は、ずっとこのスター・サファイアのパワーに守られるということですし、安泰。
ダブルでラッキー!
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石と鉱物の文化誌」(ジョージ・F・クンツ著、2011年、鏡リュウジ監訳)
「宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝石」(2017年、スミソニアン協会監修)