こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」「アレキサンドライト」「ルビー」「スフェーン」「スピネル」に続く、第22弾!!
ペリドット
「ペリドット」は、オリーブ・グリーンという特有の黄緑色で代表される宝石ですが、オイル・グリーンと言われる油っぽい色もあります。
石がオリーブ色であることから、鉱物名にオリヴィン(英名:Olivine)、和名では「かんらん石」(かんらん科の植物をいい、‘オリーブ’とは別種)と名付けられ、その中で、宝石にできる品質の石を「ペリドット」と呼んでいます。
古くは「クリソライト」とも言われ、この石のオリーブ緑色のみを、かつては「ペリドット」と呼んでいたようです。
古代エジプト人は、現在は「セント・ジョンズ島」として知られている「トパジオス」と呼ばれていた紅海にある島で、美しい緑色の宝石を採掘していました。
昔は、鉱物種の決め手となる「化学組成」や「結晶構造」などという概念がなかったので、赤い石は全てルビー、青い石はサファイア・・・という具合に、そしてそれは、他の色の石も同じような感じで、色で単純な振り分けがされていただけでした。
「ペリドット」もそんな理由から、他の宝石と混同されていた宝石です。
例えばその一つに「トパーズ」があります。
トパーズは、その名前の起源として考えられているものに、ギリシャ語の‘探し求める’という意味の「トパゾス」(Topazos)とする説があります。
これはどうやら、「その鉱床がある『トパジオス』島が、深い霧に包まれていて、島を探すのが困難だったから」ということから来ているらしいのですが、そもそも、その地で3500年もの間、脈々と採掘されてきたのは「トパーズ」じゃなくて「ペリドット」なんです!
話がかなり込み入ってますが、要は、「ペリドット」を「トパーズ」と混同していたがために起こっている混乱で、その語源から順当に行くと、本来は「『ペリドット』が『トパーズ』という名になってしかるべき」ということになります!
また、ドイツの「ケルン大聖堂」では、三聖王の棺を飾る、その200カラットもある見事な宝石は、何世紀にもわたり「エメラルドだ」とばかり思われてきました。
しかし、実際には「ペリドット」だったというね・・・。
今度は、ペリドットがエメラルドとも混同されていたという、確たる証拠でもあります。
そんなこともあるので、クレオパトラの有名なエメラルド・コレクションも「実はペリドットだったのではないか!?」と考えている歴史家もおられるそうです☆
現代においても、イギリスでは「オリヴィン」、アメリカやドイツでは主に「クリソライト」の名称が用いられていたことがあったのだそうで、混乱を避けるためには、いずれの名称も用いることは好ましくないとの意見のもと、用語統一がなされ、宝石名としては「ペリドット」の名称が用いられることになったのだそうです。
ここにきて、ようやく、決着を見せたという感じですね!
さて、そんな「ペリドット」(Peridot)の語源は、ペリドットとよく似た色の石である「エピドート」(ギリシャ語:Epidotos)ではないかという説もあり・・・、もう、何がなんやら!!
トドメに、夜間の照明の下では緑色の色味が増すという特徴から、ペリドットは「イブニング・エメラルド」の異名もあります!!!
と、こんな風に、いろんな名前で出ていたペリドットですが、全てのシーンに共通すること、それは、「人々を惑わす、魅力的な‘オリーブ・グリーン’の宝石である!」ということだと思います☆
古来よりペリドットの重要な産地であった‘トパジオス島’たる、セント・ジョン島。米国スミソニアン博物館所蔵の310カラットのカット石、古くはエジプト王プレとマイオス一世の后に献上されたという石も、この地の産とされています。
さて、ペリドットは、複屈折率が高いので、結晶を正面から見ると、透けて見える底面のファセット(切子面)稜線が、二重に見えるという、面白い特徴があります。
これは、みちょるびんも、びっくり!
ペリドットにも、まれに、キャッツ・アイ効果とスターを呈する石があるのだそうですよ。
そして興味深いのは、2005年に、ペリドットは、NASAのスターダストロボット宇宙探査が持ち帰った彗星塵からも見つかったという点です。
地球外に起源を持つ「パラサイト隕石」にも、ペリドットが含まれているのだそうで、コレクターの垂液の宝石と言われています。
最後に、ペリドットとの正しい‘つきあい方’です。
ペリドットは、比較的柔らかい石ですので、装着時には注意が必要です。
何かにぶつけて破損するリスクを減らすために、ペンダント、ブローチ、イヤリングとして利用することが望ましいと言えます。
また、急激な温度変化にも敏感な石であるため、クリーニングの際にも注意が必要です。
ペリドットに対する最良のクリーニング方は、刺激の弱い洗剤/石けんとぬるま湯、これに限ります。
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石と鉱物の文化誌」(ジョージ・F・クンツ著、2011年、鏡リュウジ監訳)
「宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝石」(2017年、スミソニアン協会監修)