こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」に続く、第18弾!!
アレキサンドライト
アレキサンドライトは、1830年頃にロシア、ウラル山脈にあるエメラルド鉱山で発見されました。
1日の作業を終え、鉱夫たちが宿舎のテントで、採取した石をランプにかざして点検していたところ、拾った時は確かに緑色であったはずなのに、鮮やかな赤色に変わっているという石があったそうです。
そして、翌朝、その石を改めて太陽の下で見てみると、再び、元の暗緑色に戻っていたのだそう。
突然現れたこの不思議な石に「もしかしたら、神様のいたずらかもしれない!」と鉱夫たちの間で騒ぎになり、鉱夫たちは、しばらく仕事が手につかなかったということです☆
その「神様のいたずら」と驚かれた石というのが、「アレキサンドライト」、その石です。
アレキサンドライトは、2月の誕生石「キャッツアイ」と同じ鉱物「クリソベリル」で、その特異なカラーチェンジを特徴とした「変種」となります。
カラーチェンジを示す石には、他にも、ガーネット、コランダム、フローライトなどがありますが、これらは、良質のアレキサンドライトが示すほどに、ビビッドな色、且つ、劇的な変化は示さないと言われています。
そのためアレキサンドライトは、‘最高の変色効果を持つ宝石’として、他の変色効果石とは一線を期し、‘カラーチェンジ’の基準となっています。
「日中はエメラルド、夜はルビー」と、ドラマティックに表現されることもあるアレキサンドライトですが、最高のアレキサンドライトとは言えども、実際には、良質のエメラルドやルビーの色を呈することはありません。
最上質の色を呈するアレキサンドライトは、昼光下でグリーンからブルーイッシュ・グリーン、白熱灯下でレッドからパープリッシュ・レッドと言われています。
しかし、市場に多く出回るアレキサンドライトは、明度が暗すぎたり、明るすぎたり、彩度が弱かったり、また、カラーチェンジも、さほどはっきりしないのが現状です。
残念ながら、ウラル山脈のアレキサンドライト鉱床はそう長くは続かず、現在では、ブラジル、スリランカ、東アフリカ産が主流となっています。
これらの新しい鉱床には、ある程度上質の石が含まれていますが、多くは、19世紀にロシアで産出されたアレキサンドライトほど、変色性を示すものはなく、色合いも濁っていると言われています。
今や、良質の色を持つアレキサンドライトは入手が困難であり、その分、アレキサンドライトは、宝石の中でも‘最も希少性が高い石’と目されています。
ところで、古来より知られる‘歴史ある石’たちは、「月の光」(ムーンストーン)、「海の妖精」(アクアマリーン)、「月の雫」(真珠)からできているだとか、‘目にいい’(エメラルド)、‘お酒に酔わない’(アメシスト)、‘止血にいい’(ブラッドストーン)というように、不思議な力を宿しているなどと、様々な言い伝えがあります。
そして、そういった神秘性が、その宝石たちの魅力の一つにもなっている、みちょるびんはそんな風に思います。
一方、アレキサンドライトは、比較的新しい石です。
1863年に、長い間、単一種の宝石と考えられていたヒスイが、実はジェイダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)の2種類に分類できるということを、科学の力が暴いてしまった(?)ことからもわかるように、現代では、昔のような、ロマンチックな言い伝えが生まれなくなってしまったように思います。
思うに、これが太古の昔なら、ドラマティックに色が変化する「アレキサンドライト」は、鉱夫たちが驚いた「神のいたずら」だけに止まらなかったことでしょう。
きっと、いろんな尾ひれがついて、すごい伝説が生まれていたはずです。
その辺が、みちょるびん的には、ちょっと残念に思うところです。
実際、アレキサンドライトの石の紹介サイトや書籍を見ると、アピールされているのは、その特異なカラーチェンジと、名前の由来に限られているという印象があります☆
と、なぜに、こんなことをわざわざ持ち出しているかというと、このアレキサンドライト最大のアピールポイントである「名前の由来」が、参考にするもの、するもの・・・、言っていることがバラバラなんです!
どれが本当なのだ!?
みちょるびん、困りました!!
アレキサンドライトが発見されたという年も、みちょるびんが見ただけで、「1830年」「1831年」「1838年」「1842年」と4パターンもありました。
また、名前の由来も、その発見された日が、のちにアレクサンドル二世となるロシア皇太子アレキサンドルの「12歳のお誕生日」「成年に達した日」「成年式の日」だったからと、これまた数パターン。
アレクサンドル二世の誕生年が1818年なので、‘12歳のお誕生日’なら1830年でぴったりですけどね。
アレキサンドライトが‘発見された’日ではなく、アレクサンドル皇太子のお父さん――時の皇帝ニコライ一世――に石が献上されることになり、ちょうど「1830年、その献上の日が、たまたま長男アレクサンドル皇太子12歳の成年式典日だった」こという新手のパターンもありました。
実は、みちょるびん的には、この説が一番‘有力っぽい’と思っているのですがね。
最後に。
アレキサンドライトが、ロシア帝国の旗の色を反映していたため、ロシア国内でも注目を集め、石に人気が出たという記述も見ましたが、ロシアの旗って「白・青・赤」ですよね・・・??
調べてみると、当時の旗も、現在と同じ「白・青・赤」だった模様。
石の色の緑色が、‘青み’を帯びていたから、フワッと「青っぽい」ってことなのでしょうか???
まぁ、めでたいことなら、ちょっとくらい強引でも、共通点を見つけて(こじつけて)、ウキウキしたくなる気持ちは、十分、わからないでもないですけどね!
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石と鉱物の文化誌」(ジョージ・F・クンツ著、2011年、鏡リュウジ監訳)
「宝石の実用知識」(1995年、川上周二著)
「全面改訂版 プロが本音で語る 宝石の常識」(1999年、岡本憲将著)