こんにちは、みちょるびんです。
(前回までのあらすじ)
入社して最初の数年は、一つの夢も実現し、何の疑問もなく、仕事に励んでいたみちょるびん。そんなある日、占いで「将来、商売を始める」「自分を抑制している」と告げられ、仕事に対し、違和感を感じ始めた。学生時代に熱中していた「演劇」に活路を見出し、カルチャースクールの演劇講座を受講。そこで出会ったつるさんに誘われ、新たにダンス教室に通うことになったのだが・・・。
【即興バトル、4日前の日記(中編)】
「即席即興バトル」を4日後に控え、今日は、オーディションを受ける人が多かった。
先週、受験した参加者の中で、一発合格したのはTくんだけだったので、Tくん以外の応募者全員が、今日のオーディション受検に集中したことになる。
バトルへの参加形態は、’ソロ’か’チーム’を選択できることになっていたが、結局、誰もが一人(ソロ)で挑戦した。
そんなこともあり、オーディションでは、皆がそれぞれ持ち込んだ曲を最後までかけるということはせず、曲の最初の方だけを流して踊るというスタイルだった。
先生による審査は、ちゃっちゃと進められていったので、私は、ますます不安になった。
と、言うのは、私が選択した曲の場合、曲の後半に盛り上がりを見せ、前半部は、あまり変化がなかったからだ。
さぁ、いよいよ、私の番。
妹のリクエストのとおり、’合格ハチマキ’を締めて踊った。
あんまり上出来とは言えなかったが、先生も含め、皆、面白いとは言ってくれた。
だが、結果については、「ちょっと待っていて」と、先生に言われた。
その後、’つるさんダンサーズ’仲間のダイちゃん等が踊り、ダイちゃんは、中学生のはっちゃんとペアになることになった。
ダイちゃんは、ダイちゃんらしい、とてもかわいらしい選曲で、オーディションには衣装まで着て臨んでおり、意気込みが感じられた。
やはり、自分の好きな曲で、自由に踊ると、のびのびしていて、その人の持ち味が存分に発揮されるという感じがした。
しかし、はっちゃんと組むことになり、試しに二人で踊ってみた際は、ダイちゃんのオーディションで見せた勢いは、すっかりなくなっていた。
まず、はっちゃんが戸惑っていた様子であったということもあるが、ダイちゃんはダイちゃんで、はっちゃんに気を遣って、自分を押さえている感じがあったせいだ。
さて、私はというと、先生が「ソロが多すぎる」と言い出し、私を、他の人と組ませようとされた。
まず、’オーディション受験をしなかったプロの方’たちとのペアが提案されたのだが、その人たちは、そもそも、所用のため「バトル」自体に出演できないということだった。
それで先生は、迷われたあげく、最後には、私に、一番に一発合格していたTくんと組むよう勧められた。
ここまで、ソロでの出演が決定したメンツを見ると、皆、プロのダンサーばかりで、そんな中、Tくんは、ダンサーとしては少し、経験が浅いというところは否めなかった。
だから、順番的に、Tくんに白羽の矢が立っても仕方がないように思われた。
先生に「Tくんと、ちょっと一緒にやってみて」と言われ、例のあの激しい曲がかけられた。
全く知らない曲だし、戸惑ったが、私は、適当なタイミングで飛び出していき、隣で激しく踊るTくんに、調子を合わせた。
面白くないわけがない。
皆、大喜びし、笑いながら「優勝候補が現れた!」と口々に言った。
しかし、私は、不満だった。
このオカシな曲で踊るからには、Tくんの調子に合わせた、’変な動き’を要求されることになろう。
私は思わず、「えーっ!!」といやな声を出したのだった。
オーディションが終了し、私とTくんは、スタジオに残って、急いで、もう一度、曲を聴くことにした。
Tくんは、いろいろと踊りたい曲があって、実は、まだ、どれにするか迷っているということだった。
しかし、私と組んで一緒に踊るのであれば、準備の都合上、今日中に、曲を決めてしまわなければなるまい。
私は、念のため、私が用意していた曲を、最後まで流して聴かせたが、Tくんは乗り気ではなかった。
私は、Tくんに調子を合わせて踊ること自体には自信があったが、そうなると、「自分のダンス」は踊れないだろうと、残念に思った。
それに、Tくんだって、せっかく一番に勝ち取った「ソロ枠」なのだから、ソロで踊りたいに違いなかった。
CDを何枚も持って来ていて、曲をどれにするか迷っているというのも、「即席即興バトル」への’ソロ参加’を楽しんでいる証じゃないか。
Tくんは、私に「表現したいことが異なるのであれば、一緒に組まない方がいい」と言った。
「ちゃんと先生に、ソロで参加したい」と言うべきだと。
それに、私は、「ソロでも、十分に踊れるだろう」と。 (つづく)
以上、みちょるびんでした!