こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」「アレキサンドライト」「ルビー」「スフェーン」「スピネル」「ペリドット」「サファイア」「クンツァイト」「トルマリン」「オパール」「トパーズ&シトリン」「ジルコン」に続く、第29弾!!
トルコ石
「トルコ石」は、採掘された宝石のうち最古のものの一つと言われており、色は、青色から緑色まであります。
「スカイ・ブルー」は、トルコ石の最高品質の色を表現したもの。
以前はペルシャとして知られていたイランは、「スカイ・ブルー」の石を産していた伝統的な産地として有名です。
取引上は、実際の産地を問わず、このような色を「ペルシャン・ブル―」とも表現するそうです。
一般的には、スカイ・ブルーの石が最も人気があるとされていますが、チベットでは緑色の方が好まれているそうです。
トルコ石は、色むらがなく、均質であるものが良質とされています。
中には、黄褐色や黒色の縄目模様を持つものもあります。
トルコ石は、褐鉄鉱や砂岩の中から産出されるため、そういったものを内包したことにより模様が生まれるのです。
この模様が美しく現れたものは「スパイダー・ウェブ」(クモの巣)と呼ばれ、欧米などでは珍重されています。
さて、「トルコ石」と呼ばれるくらいなので、トルコ石は、トルコの特産物と思われがちですが、実は、トルコでは、トルコ石の産出はありません☆
トルコ石は、古くから、イランとシナイ半島(エジプト)で産出されていましたが、これらの石がトルコを経由して、あるいはトルコの商人によって、ヨーロッパにもたらされたことから、‘Turkish’(トルコの)という語が、この名の語源になったと言われています。
なかなか興味深い話です。
みちょるびんの記事にもたびたび登場する鉱物学者ジョージ・フレデリック・クンツの書籍によると、ペルシャ人はこの石の美しさと効力をとてもよく理解していたので、国の石と定めたということです(「宝石と鉱物の文化誌」(2011年、鏡リュウジ監訳))。
ウィキペディアをチェックしたところ、確かにイランの国石はトルコ石となっていました。
じゃぁ、国名までついてしまったトルコはというと、やっぱり、トルコでも国石はトルコ石になっていました。
良かった!
勝手な想像ですが、トルコ人に初めて接する外国人の多くは、「(君の国では)トルコ石が有名だね!」と、話のとっかかりとして、トルコ石を話題にしそうじゃありませんか?
しかし、実際には、トルコではトルコ石は産出されず、本来、ちょっとセンシティブな内容であり、トルコの人にとっても都合が悪いことでしょうからね・・・。
でも、トルコ石がトルコの国石として定められているのであれば、安心。
トルコの人だって、誇りを持って説明できることでしょう!
ところで、宝石は、昔から、護符としての役割も担っていましたが、1つの宝石に関連づけられていた効力を、それと同じ、あるいは似たような色・外観を持つ別な宝石にも当てはめるということがよくあったのだそうです。
そもそも、昔は、色が同じということで、同一の石と混同されていた事実も多々ありましたし、なんとなく、その辺は、ざっくりとしていたんじゃないかという気がしますけどね、みちょるびん的には。
そんな中、トルコ石については特別で、トルコ石には、他の石には当てはまらない特別な力があると考えられていたそうです。
その特別な力とは―――。
身に着けた人を、落下の怪我、特に馬の背から落ちる怪我から守る! というもの。
しかも、後にはこれが拡大解釈され、建物や断崖から落ちても問題なし!ってことになったのだとか。
すごいパワーです!!
スパイ映画やアクション映画に登場する主人公には、是非とも、おススメしたい逸品ですね、これはっ。
しかし、注意しなければならないのは、トルコ石は買って手に入れると、その護符としての力は失われるという点です。
トルコ石に住む妖精は、石が売られたり買われたりすることがわかると、立腹して石から離れてしまい、トルコ石は、何のありがたみもない‘ただの石のかけら’になると言われているからです。
そうなってくると、トルコ石の妖精に、建物や断崖からの落下から身を守ってもらうためには、トルコ石の坑夫から直接石を譲ってもらうか、あるいは、トルコ石鉱山で自力で採集しなればならなくなってきます。
スパイ映画やアクション映画の刺激的な物語を語る前に、「エピソード0」という形で、主人公が、自身の最強の護符となる‘高品質スカイ・ブルーのトルコ石’を掘り当て、トルコ石の妖精との間に強力な信頼関係が築かれるまでの、壮大でドラマティックで、並々ならぬ苦労話が1つ、出来上がりそうですね!
あっ、いや、ストーリーを2部構成にすると、もっと収益が見込めるかも!?
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石と鉱物の文化誌」(ジョージ・F・クンツ著、2011年、鏡リュウジ監訳)
「地球自然ハンドブック:宝石の写真図鑑」(1996年、キャリー・ホール著)