こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」「アレキサンドライト」「ルビー」「スフェーン」「スピネル」「ペリドット」「サファイア」に続く、第24弾!!
クンツァイト
「クンツァイト」は、鉱物種「スポジュミン」の変種で、ライラック・ピンクのものをいいます。
緑色の変種は「ヒデナイト」、黄色の変種は「トリフェーン」と呼ばれます。
「スポジュミン」は、「輝石グループ」に属する「リチア輝石」にあたり、成分的にはリチウムというやや特殊な元素を含んでいます。
そのため、リチウムの重要な資源でもあります。
スポジュミンは、「ひすい輝石」とともに宝石になる美しい‘輝石’の1つであり、「グループ」は、「同じ結晶構造で、わずかに異なる化学組成を持つ鉱物から成るもの」なので、「クンツァイト」と「ジェイダイト」はいわば、縁者であるということが言えます。
「クンツァイト」と「ジェイダイト」は全く外観が異なるので、言われてみないとわからないことです!
「スポジュミン」の名前は、「燃えて灰になる」「spod」(灰)という意味のギリシャ語に由来します。
これは、スポジュミンの一般的な結晶が、曇った灰色をしているからだと考えられており、宝石品質でないスポジュミンは、200年以上前から鉱物学者には知られた存在だったそうです。
さて、最初に宝石品質として認められたスポジュミンは、1877年にブラジルで発見されました。
1879年にアメリカ・ノースカロライナ州で発見された緑色の石も、ブラジルのものと同一鉱物の変種であることがわかり、その石は「ヒデナイト」と命名されました。
発明家トーマス・エジソンより、プラチナ鉱脈を探すよう依頼を受けていた鉱物学者ウイリアム・アール・ヒデンが発見したものだったので、彼の名前に由来しています。
スポジュミンは、先にもご説明しましたとおりリチア輝石であり、ヒデナイトがエメラルドと共生していたことから、一時は「リチア・エメラルド」と呼ばれていたことがありました。
なお、この鉱物が発見されたノースカロライナ州のホワイトプレインズにある小さな村落は、この鉱物の発見後に「ヒデナイト」と改名したのだそうです☆
一方、カルフォルニアの鉱山で偶然発見されたピンク色の石は、ティファニー社の顧問も務めていた鉱物学者ジョージ・フレデリック・クンツの鑑定により’スポジュミンの変種である’ことがわかり、1902年、科学雑誌で発表されました。
そうして、そのピンク色のスポジュミンは、クンツ博士にちなんで、クンツァイトと命名されたのでした。
クンツァイトは大型の石は発見されますが、ヒデナイトには濃色で大型のものは少ないと言われています。
クンツァイトは、ライトピンクが最も一般的ですが、トップクオリティのクンツァイトの色は、強いピンクと強いバイオレティッシュ・パープルになります。
多色性が強いため、角度によって、無色と地色の2色が観察されます。
そのため、カットする際は、色が濃く見える方を正面に向けるよう工夫されています。
クンツァイトの魅力的な色は、強い光、あるいは高熱によって退色するという傾向があるため、身に着ける際には、環境に気を配る必要があります。
また、スポジュミンは、フェルドスパー(ムーンストーン、ラブラドライト、サンストーン等)よりわずかに硬度(摩擦や引っかきに対する強度)が高い程度であり、また、ある特定方向に大変割れやすいという性質を持っています。
従って、何かにぶつけて破損するリスクを減らすために、ペンダント、ブローチ、イヤリングとして利用するなど、より一層の注意が必要となります。
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝石」(2017年、スミソニアン協会監修)
「地球自然ハンドブック:宝石の写真図鑑」(1996年、キャリー・ホール著)