こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」「ムーンストーン」「アレキサンドライト」に続く、第19弾!!
ルビー
ルビーは、ダイアモンドに次いで、硬度(摩擦や引っかきに対する強度)の高い鉱物「コランダム」で、赤い色の石(変種)だけを指します。
「ルビー」の名は、ラテン語の「赤」を意味する「ルベウル」からきており、この名は14世紀初めから広く使われてきました。
そして、宝石に対する科学的な知識のない中世以前においては、赤色透明の宝石は全て「ルビー」と呼ばれていました。
そういうこともあり、歴史的にも「ルビー」とされてきた宝石が、実は、ガーネットやスピネル、トルマリンであったという例が多くあります。
なお、古代サンスクリット語では、ルビーは「ratnaraj」(ラトナラジュ)、つまり「貴石の王」と呼ばれています。
「貴石の王」にふさわしく、ルビーの1カラットあたりの価格は、全ての色石の中でもトップクラスであり、ルビーは色石市場で、重要な宝石の一つとなっています。
さて、最も純粋な「コランダム」であれば、石の色は無色となりますが、その結晶構造の一部に不純物が加わることで、石に色が生じることになります。
ルビーの赤色の色因は、微量元素である「クロム」です。
このクロムが多いほど、ルビーの赤の色相が強まり、また、その色を更に強く見せる働きをする‘蛍光反応’を生じさせると言われています。
ミャンマーやベトナムにある鉱床のように、大理石を母岩として形成されたルビーは、母岩における鉄の含有量が低いため、赤色の蛍光を発する典型です。
一方、タイなどの鉱床のように、玄武岩を母岩に持つルビーは、大理石を母岩とするものよりも鉄を多く不純物として含有しており、その鉄は、蛍光反応を抑制することになります。
また、鉄の含有率が高いルビーは、外観が暗いものとなる例が多いとも言われています。
そのため、最高品質のルビーは、蛍光を伴うミャンマー産のような鮮やかな赤色とされ、「ビジョン・ブラッド」(鳩の血)として形容されています。
なお、天然コランダムには、他鉱物であるルチルが、細い針状の結晶となって内包されていることが多いのですが、この内包物が顕著に発達した原石を、適切な方向にカボションカット(半球形に丸く研磨)にした場合、「アステリズム」効果を示し、六条のスターを呈することになります。
これが「スター・ルビー」です。
ところで、我が国の宝飾の歴史を紐解くと、明治後期は貴金属宝飾業の基礎が固まり、宝飾品と装身具が大いに発展した時期と言われています。
従来にない新しい洋風装身具が登場し、髪飾りや帯留めなどの和装の装身具も新様式のものが用いられ、ダイアモンド、ルビー、真珠を始め、様々な宝石が盛んに使われ始めたそうです。
ただ、当時の実態や遍歴を知る重要な手がかりとなる宝飾品は、戦争中の貴金属供出のため、現代に伝わるものはごくわずかしかないと言われています。
それで、露木宏氏は、当時の雑誌や新聞などの宝飾品広告を活用することで、分析・研究をされています。
以下、露木先生の書籍「詳説・日本の宝飾文化史」を参考に、一部をご紹介します。
例えば、明治24年の広告によると、ダイアモンドの他、サファイア、ルビー、エメラルド、オパールなどが、指輪に用いられている具体的な宝石として挙げられており、広告中の表記で“サファイアが『サツフヤ』、ルビーが『リュビー』となっている”のだそうで、みちょるびん、個人的にはそこにツボッてます☆
ただ、露木先生に逆らうようなことを申し上げて恐縮ですが、‘音読み’という趣旨で本文に表記されるならば「サツフヤ」ではなく「サッフヤ」が良いのではないかと思われます。
促音「っ」は、古く日本語には存在しなかったとされていて、1946年の内閣訓令第8号「『現代かなづかい』の実施に関する件」で、「なるべく右下に小さく書く」という規範が示されるまでは、文字の大きさに、差は設けられていなかったのだそうです。
従って、広告の記載「リユビー」を「リュビー」とされるのであれば、「サツフヤ」も「サッフヤ」とされた方が、より‘サファイア’の発音に近いのではないかと思いました。
しかし、その後の広告では、「ッ」がなくなり、「サフヤ」に変更されたようですがねっ。
さて、明治26年の資料によると、指輪に、ダイアモンド、ルビー、サファイア、エメラルド以外にも、真珠、トパーズ、オニキス、ムーンストーンなどの石が用いられていたそうです。
更に明治29年頃には、オパールやキャッツアイ・クリソベリル、31年頃になるとアレキサンドライトの指輪も売られ始め、また、天然真珠の指輪もあったそうです(ここでも、「キャッツアイ」は、資料では「キヤツトスアイ」という表記になっており、やっぱり、「ッ」は「ツ」とされています)。
最後に、この広告には「ケンドルビー」と言う、聞いたことのない宝石名も掲載されているそうです。
ルビーの合成石ができたのは、さまざまな合成宝石のうちでも最も早く、作成に成功したのは1800年代末で、市場に発表されたのは1902年と言われています。
この広告が出た年(1998年)から推察されるに、「ケンドルビー」とは、合成ルビーではなく、それ以前からあった天然ルビーの細片から作った再生ルビーのことなのだろうと、長年考えられてきたそうなんです。
しかし、その後の研究で、やはり、初期の合成ルビーではないかと言われ出したのだそうで、露木先生によると「なぜ『ケンドルビー』と呼んだのか、未だに不明」ということらしい。
「(合成/再生)ではあるが(それでも)ルビー」→「(合成/再生)だけどルビー」→「(合成/再生)だけンどルビー」→「ケンドルビー」ってのはどうでしょう!?
どこかの、方言が入っちゃってますけど☆
サンゴの最高級カラーである「エンジェル・スキン」を「ボケ」(ぼけた色だから)と呼ぶことをいとわないお茶目な人々なので、「ダジャレ的なことを言ってても、おかしくなさそう!」と思うのは、みちょるびんだけでしょうかーっ!?
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「詳説 日本の宝飾文化史」(2019年、露木宏著)