こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」に続く、第13弾!!
エメラルド
エメラルドは鉱物種「ベリル」の中でも、緑色の石(変種)を言います。
ただし、「緑色」と一口に言っても、明度が高く(明る過ぎるか、あるいは色相に黄色が強過ぎる)、彩度が低い(色味の強さ/鮮やかさの度合いが低い)ものは、「エメラルド」とは呼ばず、「グリーン・ベリル」として区別されています。
最も望ましいとされるエメラルドの色は、「ブルーイッシュ・グリーンとグリーンの色相」で、「彩度はストロングからビビッドの間」、「明度はミディアムからミディアムダーク」のものです。
仮に、石の大きさ、クラリティ(質)等、他の要素が同程度であったとしても、この「明度」「色相」「彩度」の微妙な差が、価格にも大きく影響してくると言われており、逆に言うと、それほど、石の色が重要視されているということが言えます。
1963年までは、微量元素の「クロム」が、「エメラルド」を「エメラルド」たらしめる唯一の‘色因’だと考えられていましたが、国際市場に登場したブラジル産のものが、実は色因が「バナジウム」であったことがわかり、それをどう受け止めるのか、議論されたそうです。
そして、最終的には、「クロム」のみならず、「バナジウム」起因のものも、エメラルドであると結論づけられ、それまで、「グリーン・ベリル」とでしか扱われなかったものが、「エメラルド」に格上げされることになりました。
何とも、マニアックな話ではありますが、生産者からすると、石の価格にも影響を及ぼす重大なことです。
緑色の石ならどれも「エメラルド」だと呼んでいた、おおらかだった古い時代のことを考えると、科学が発達した現代は、かえって面倒だったりしますね。
エメラルドやアクアマリンなどのベリルは、一般的に「エメラルド・カット」と呼ばれる「ステップ・カット」の一種にカットされます。
「ステップ・カット」とは、大きい四角形のテーブル面をもったカット法で、平行に配列されたファセットを側面から見た際に、ステップ(階段)のように見えることから名づけられました。
「エメラルド・カット」では、更にその四隅の角を少しだけ削り取ることで、欠けやすいエメラルドを、衝撃などから守るという工夫が施されています。
なお、「エメラルド」等のベリルにこのカット法が多い理由は、これが石の色を引き立てるものであるということもありますが、このカット法だと、六角柱をした原石からの歩留まりが最大限に良いからです。
しかし、エメラルドの「カット」は、そんな単純な話ではないようです。
実は、エメラルドにも、多色性があり、見る角度によって、ブルーイッシュ・グリーンからイエロイッシュ・グリーンというように、見え方が変わってきます。
ブルーイッシュ・グリーンの方がより価格が高くなるため、好ましい色が得られるよう考慮する必要があります。
これは、多色性を持つ色石の宿命ですね・・・。
そして、エメラルドのカットを更に難しくしているのが、ほとんど全てのエメラルドには、フラクチャーと呼ばれる‘亀裂’が多いという点。
また、このフラクチャーの存在は、エメラルドが脆いと言われる所以でもあります。
エメラルドは、その多いフラクチャーを目立たなくするために、オイル等に浸して、フラクチャーを充填することが一般的。
90%の石にこの処理が施されているとも言われています。
そういったこともあるので、エメラルドは、超音波洗浄やスチーム・クリーニングを用いることは危険です。
また、皿洗いの際など、お湯にさらされることで損傷することもあるそうなので、注意が必要です。
なんだか、最後は、エメラルドのデリケートな面を強調するような感じになってしまいましたが、そういった部分を差し引いてでも、おつりが返ってくるくらい、人々を虜にするのが、エメラルド。
エメラルドは、宝石の取引において、色石の中で、最も美しい緑色を呈すると評されています。
そして実際に、長い間、エメラルドが、宝石の「緑色」の標準として、他の緑の宝石たちをけん引してきたのは、紛れもない事実だと思います。
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石の実用知識」(1995年、川上周二著)