こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」に続く、第11弾・・・。
3月生まれの皆さん、ごめんなさい!
新誕生石「アイオライト」のことがすっかり抜け落ちてしまっていました!!
でも、その前に、突然ですが12月の新誕生石「タンザナイト」を先に紹介させてください!!!
タンザナイト
1967年、キリマンジェロ山に近い、アフリカのタンザニアで、ブルーの結晶が発見され、その後の検査で、鉱物種「ゾイサイト」の新しい‘変種’であるとの結論に至りました。
それまで、「ゾイサイト」と言えば、飾り石や彫刻材として使われるだけの不透明石(緑色またはピンク色)という認識でしかなかったので、この「青い透明」の変種は、宝石業界に大きな驚きを持って迎え入れられることになりました。
ティファニー社は、この新しい宝石のプロモーションに乗り出し、「タンザナイト」というエキゾチックな名称を与えました。
この青い宝石は、消費者の関心を引き、80年代にはアメリカを中心に人気を博し、そして現在は、世界的に人気の高い宝石となっています。
タンザナイトは、このように、発見されて瞬く間に、注目を集めることになりましたが、実のところ、発見当初は、当時希少性が高まっていた最上質のサファイアの‘廉価な代替品’という、売り手側の思惑があったそうです。
実際に、タンザナイトの需要や価格は、サファイアの供給量にも影響を受けることも多かったようです。
しかし、タンザナイトは、「サファイア」のブルーとも、「アメシスト」のパープルとも異なる独自の色の中に、朝露を含んだような瑞々しさを持っており、みちょるびん的には、これこそが、タンザナイトの最大の魅力であり、武器ではないかと思っています。
それに、タンザナイトは、今でも唯一、タンザニアのメレラニ鉱山でしか産出されておらず、そういった観点から、かの「ダイアモンド」よりも希少性が高い宝石であるということが言えるのです。
さて、タンザナイトの特徴には、「多色性」が強いということが挙げられます。
石の角度を変えて観察すると、「青色」「淡青色」「紫色」の3色を確認することができるのです。
これは、「新☆誕生月!」の記事で紹介した「アレキサンドライト」の特殊効果である‘光源’の違いで起こる変色(カラー・チェンジ)とはまた、別の特性となります。
タンザナイトが最も高く評価される色は、「良質のサファイアに似た純粋なブルー」あるいは「強いバイオレット・ブルー」と言われています。
サファイアの代替品という扱いを受けていたことを考えると、それは当然のことかも知れません。
「ブルーイッシュ・パープル」も人気の色ではありますが、前述の色に比べ、価格はやや低くなるのだそうです。
従って、多色性のあるタンザナイトの’フェイス・アップ’(正面)に、どの色を持ってくるかで、石の価値が左右されることになり、つまり、カットの果たす役割がとても大きいことを意味します。
当然、色としての価値が高い「純粋なブルー」や「バイオレット・ブルー」が正面になるようにカットしたいところですが、その場合、「ブルーイッシュ・パープル」の時よりも、原石の歩留まりが悪くなるというジレンマがあるのだそう。
つまり、カット後のサイズが小さくなってしまうというのです。
そういう事情もあり、フェイス・アップで「純粋なブルー」の色相を示すタンザナイトよりも、「ブルーイッシュ・パープル」の石の方が、より多く流通しているのだそうです。
タンザナイトのカッターは、「小さめのトップ・カラー」を取るか、「大きめのブルーイッシュ・パープル」を取るか、経済的に有利となる方の選択を迫られることになります。
タンザナイトは、その他、ある一定の方向に割れやすいという性質も持っています。
靭性(割れの強度)も高くはないので、ジュエリーのデザインには工夫が求められ、また、身に着ける側も、衝撃に気をつける必要があります。
なお、振動にも弱い石なので、超音波洗浄器での洗浄は行わないよう、注意が必要です。
タンザナイトが最初に発見された時、結晶は偶然にも青色でしたが、実はこれは、大変まれなことで、通常、未処理のタンザナイトは、茶色であることが一般的です。
今日販売されるタンザナイトの95%は、熱処理の過程を経て、あの美しいブルーが引き出されているとのことです。
ただし、幸い、合成石は開発されていないとのこと。
最後に、1991年には、彩度の高いグリーンの透明石(変種)も発見されており、また、ピンクの透明石(変種)もあるのだそうです!
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)