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奇妙な関係性。(2)

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 こんにちは、みちょるびんです。

 昨日の記事「奇妙な関係性。」に引き続き、再び、夢子さんにまつわる昔の日記です。

【前回から2ヶ月後の日記】

 夢子さんと久しぶりに会った。
 また一緒にカフェに出かけ、今日は閉店までいた。

 喧嘩になった。

 夢子さんと話をしているとイライラしてくるのだ。
 元来負けず嫌いである私の性格が刺激され、言葉で負けたくないと思わせるのである。
 おそらくそれは彼女も同様なのだろう。
 私に反論され、彼女も反撃してくるものだから、お互いにエスカレートしていった。

 私は普段は、当たり障りのないよう、できるだけ言葉を選びながら話すよう努めている。
 だが今日は、久しぶりに強い口調になった。

 何かの拍子に、私が自分のことを「私は自分に甘いから」と言った時に、夢子さんがそんな私に対し「そうやって自分を甘やかす?/言い訳する?/決めつける?」のが私の悪いところ、それだからいけない・・・というようなことを言ってきた。
 そういえばいつだったかも、同様の反応をされた記憶がある。

 私は、上から見ているようなそのもの言いに、いい加減我慢ができなくなり、反論した。
 こちらの意見に対し、夢子さんはいつも他のところから攻めてくる傾向があり、そうやって論点を別のものにすり替える。
 その点についても指摘した。

 すると夢子さんは、先制攻撃してきたのは私の方であり、私は‘上から目線である’という言い方をしてきた。

 その彼女の反応に対し、私は優越感を覚えた。
 彼女自身に「私に(口で)負けている」と思わせることができたと感じたからだ。
 夢子さんも私と同じで、負けず嫌い。
 そんな彼女を言い負かせているということに、私は喜びを感じた。
 夢子さんには悪いが、実際、夢子さんは女々しく感情的で、少々論理性に欠けている。

 夢子さんから、ウッディ・アレン監督の映画「ミッドナイト・イン・パリ」を観たと聞かされた。
 2ヶ月ほど前に、彼女を含む友人とウディ・アレンのドキュメンタリー映画「映画と恋とウディ・アレン」を観に行き、その後皆でウディ・アレン談義をしたことがあった。

 「ミッドナイト・イン・パリ」は、その時に私が話題に取り上げた映画で、夢子さんはその時にはまだ、この映画を観ていなかった。
 そもそも私は、それまでウッディ・アレン監督の映画を観たのはその映画だけだったので、それを話題にするしかなかったのだ。
 それに「主人公が婚約者の真珠のピアスを盗んで新しい彼女に贈った」というくだりに対する私の憤りに対し、宝石好きの夢子さんたちからも賛同が得られるだろうということは容易に予想できることだった。

 因みにウディ・アレンは、高校生の頃から‘ジョーク’を作っては雑誌(?)に投稿するなどしていたらしい。
 1日に50くらいのジョークを作ることは、彼にとって簡単なことだったのだそう。
 そういうこともあり、彼はスタンダップコメディアンとして人前に立つことになる・・・。
 だから、彼があの真珠のピアスのエピソードを映画の中に盛り込んだということに、私は納得した。
 彼にとってはあのシーンは‘笑い’の部分なのだ。
 確かにあそこはコミカルだったし、実際に観客も笑っていた。
 ただ、ジュエリーに対する思い入れの強い者からするといただけない話だし、元カノの手あかのついたものを新恋人にプレゼントするなんてこと自体がナンセンス。
 だが、ウッディ・アレンにとっては、これは愉快な話という位置づけなのだ。

 その問題の「主人公がイヤリングを盗んで新恋人に贈った」話を夢子さんが取り上げ、「許せない」などという強い口調で語ったことにびっくりしたし、一方、私が未だに同じ感想を抱いていることに対して「ナンの進歩もしていない」と馬鹿にされたことは心外だった。

 私はこれまで、その独特な切り口や感性を褒められることはあっても、こんな風に蔑まされたことはない。
 私の感想を、多くの人が面白がって聞いてくれるのに、夢子さんは違うのだ。

 もちろん、いろんな考えの人がいて当然だし、私の変わった感性が万人に受けるとも思ってはいない。
 それにしても、あの夢子さんのこだわりようは、逆におかしくないか!?

 自分の映画の感想――映画「東京家族」(小津安二郎監督の「東京物語」(1953年松竹)をモチーフとして制作された山田洋次監督作映画)の中で、‘豪華ホテルにステイせずに戻って来る老いた両親の行動’をさんざん避難していた点――に私が戸惑っていたことには気づいていないらしい。

 夢子さんは、自分ばかりが丸裸にされた気分であり、自分のことを秘密にする私のことをズルいと責めたが、私に言わせると、初対面であった私に対して、こちらが訊きもしないことを自分からベラベラと赤裸々に語ってきたのは夢子さんの方である。
 また、私が何か話したところで、全て自分の話に結び付けてはまた、自分のことをしゃべり出しているということに、夢子さんは自分では気づいていないらしい。

 それに第一、「さあ、話せ!」と言われて、話せるものでもない。
 そもそもこちらは、それ以前の問題として、見ず知らずの人に「個人的な深い話をしよう」などという気は湧かないのだ。

 夢子さんが家族に関する悩みを打ち明けたのは私だけだったようで、その行方が心配で「大丈夫だった?」と思いやったことがあったが、それについてもデリカシーがないと怒られた。
 自分から積極的に話して、私を巻き込んでおきながら、今更「それに触れるな!」と急に態度を翻すのだから驚いた。
 「デリカシーがない」なんていう烙印も、ここ数年間、押された記憶がない。

 つくづく、彼女とは‘反り’が合わない―――。

 それでも話を持ち直し、夢子さんとは引き続き、夕飯を共にすることになった。

 私は、夢子さんの家族と同じ星座生まれなのだそうで、夢子さんに、これまで出会ったその星座の人の中で、一番優秀であると妙な褒められ方をした。
 その後、同じ方向だったので、一緒の電車で帰った。

 電車の中で、夢子さんが、自分で考えた自分のペンネームを教えてくれた。
 私もよせばいいのに、その場の思いつきで別の名前を挙げ、こっちの方が夢子さんに合っていそう!と面白おかしく提案してもんだから、更なる詳細を知りたいからと言って、夢子さんは私と同じ駅で一緒に下車してきた。

 仕方がないので近くの喫茶店にまた入り、そうやって終電近くまで夢子さんと一緒に過ごすしたのだった。

【それから1ヶ月半後の日記】

 今日子さんと夜ご飯に出かけた。

 今日子さんも、最近姿を見かけない夢子さんのことが気になっていたようで、私は我慢できずに、これまでの夢子さんとの出来事を話した。

 「見捨てないからね」という、夢子さんからの上から目線の発言にびっくりしたという話をしたところ、「それは‘自分のことを見捨てないでね’という裏返しである」と言われた。

 心優しい今日子さんは、夢子さんが自分のことしか考えられない、いっぱいいっぱいの状態だったのだろうと同情した。
 夢子さんは私のことが好きで、私を信頼していたんじゃないか、とも言った。

 でも今日子さんも、夢子さんのことを変わった人と感じていたようだったので、私は少し安心したのだ。

                             以上、みちょるびんでした!

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