こんにちは、みちょるびんです。
【その週末の土曜日の日記(後半)】
さて、外出先から家に戻ったのは、16時頃だった。
それから、書類探しをスタートさせた。
母・マミーに訊いて、まず、書類を保管している引き出しを洗うことにした。
引き出しを開けると、真っ先に、「重要書類」と表に書いてある封筒が出てきた。
そこには、家の権利書が入っていた。
「どうぞ、ご自由にお持ちください」という感じ。
マミーは、それが引き出しの一番上に出ていたことを不審がった。
私は、似たような外観の書類を求めて、たくさんある封筒の中を、一つ一つ確認していった。
中には、ボロボロに破れた封筒や、書類があり、正直、どれがどう大切なのか、わからなかった。
あまり関係のない、もう捨ててもよさそうなものも、たくさんあったように思う。
まぁ、’目くらまし’にはなりそうだが。
汚い引き出しの中をチェックしながら、私が、モノを捨てられない性分なのは、父・パピーに似ているからなんじゃないかと思った。
その引き出しの中からは、問題の書類は出て来なかった。
私は、念のため、押し入れの中もチェックしてみた。が、なさそうだった。
今度は、場所を変えて、別の引き出しを確認した。
懐かしい写真や、私が海外からパピーらに宛てた手紙等が出てきた。
私は、しばし、読み返してみたりするなどした。
整理整頓や探し物をしている時、陥りがちな罠である。
だが、なかなか面白かった。
海外にいる時に気に入って、水彩画を買ったことがあったのだが、その絵を買うに至るまでの経緯等が手紙の中で説明されており、感心した。
すっかり忘れていたのだ。
どういうわけだか、ギャラリーで仕事をする機会があり、そこで、あの絵にfall in love(恋に落ちる)したらしい。
購入を、半年間迷って、ようやく決心したのだとか。
しかも、作者の画家に、絵を習いたいと思い、ギャラリーを通じて、話を通してもらったという積極ぶり。
我ながら、感服。
それが縁で、その後、その作者が出版したダイアリー帳に、私が購入した絵も掲載されることになったみたい。
面白いものである。
その他、私が中学3年生の時に書いて、何かのパンフレットに載った挨拶文等も見た。
とても立派なことが書いてあり、将来、有望な、利口な子だったんだなぁと思った。
自分のことだけど。
今の自分は、果たして立派になったのだろうか?
あの希望に満ち溢れた時の私に、恥ずかしくない?
口はうまくなったけど、口先ばかりで、内容が伴っていないんじゃないか?
なんか、当時の私の方が、純粋で、よほど立派な気がする・・・・。
結局、その思い出の引きで出しには、権利書は、入っていなさそうだった。
そして、別の引き出しへ。
引き出しを開けたすぐ上に、パピーの思い出の、「感謝状」があった。
以前、集合写真等の台紙の裏に隠していたことがあったと聞いたので、念のため、台紙の隙間をチェックしてみた。
すると、何やら、紙が挟まっているようだった。
何気に引っぱり出してみると、「権利書」とある。
「これじゃないの!?」と、たぶん、思わず、声を上げたんじゃないか。
中をペラッとめくってみると、記載されていた住所は、パピーの出身地のものだったので、「ああ、昔のヤツか」と私が言うと、横から覗き込こんできたマミーが、「そこに書かれている人の名前に、聞き覚えがある」と声を上げた。
次のページをめくると、そこには、探していた土地の住所が書かれていた。
これじゃないか?
しかし、そもそも、そんな大切なものを、こんなものの裏に入れたりしないんじゃないか!?
私は、ドキドキしながら、パピーのいる部屋に走った。
そして、横になっていたパピーに書類を手渡し、判断をゆだねた。
パピーは、書類にくいいるようにして目を通し、「まさに、この書類である」との判定を下したのだった。
良かった!!!
パピーは、体を起こし、「良かった」と言って、涙を流した。
「身内に疑いをかけ、取り返しのつかないことになるところだった」と言って、泣いた。
後から駆けつけてきたマミーも、泣いていた。
「この1、2ヶ月、本当に、心配で、どこを探しても見つからないし、大変だった」と言った。
もう、私が次に帰省する予定の正月までは待てない、限界だと思い、私を呼んだのだと。
書類が出てこなければ、次の月曜日に、土地が他人の手に渡っていないか、法務局に行って、確認してもらおうとも思っていたと。
パピーは、「お前が生まれた時、(パピーの)伯父さんが、お前のことを’宝子(たからご)’って呼んだが、その通りだった」と、また、涙した。
私も、もらい泣きしてしまった。
本当に、良かった。
パピーは、「腰の痛みが、少し楽になった」と言った。
実際に、それまで、弱々しくヨロめいていたパピーが、急にすくっと立ち上がったので、私とマミーは、パピーのその変わり様に大笑いしたのだった。
「夏の台風が来た時に、家の雨戸等を補強するのに、変な体勢で作業したせいで腰を痛めた」と、パピーは言ったが、「この1、2ヶ月、探しても探しても見つからないその権利書のことが、心配で心配で、それで、萎えていたのだ」と告白した。
ぎっくり腰は、ストレスから来ることもあるのだそうだ。
本当に良かった。
じいちゃん、ばあちゃん、妹の祈り、そして和尚さんに感謝。
そして、私は、’ぬいぐるみたん’がにこにこ笑っていたので、きっと深刻な状況じゃないと、信じていたのだ。
良かった。
ありがとう。
みんな、ありがとう!!
問題の権利書が見つかったら、急に喉が渇いた。
私は、マミーについて来てもらい、一緒に、近所の酒屋にビールを買いに行った。
今夜は、ビールが、格別にうまかった!!
以上、みちょるびんでした!