ハプニング

U To お見合い。-後編-

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こんにちは、みちょるびんです。

(前回までのあらすじ)
故郷でお世話になった宙海(ちゅうかい)さんの紹介で、お見合いすることになったみちょるびん。お相手は、同じく東京で働いているという、同郷の人だった。初デートは、先方の体調不良のため、お流れに。改めて仕切り直しすることになったのだが・・・。

【あれから2週間後の日記】

 今日は、味相(みあい)さんに会う日。

 前回の待ち合わせの時ほど、緊張はなかったが、やっぱりユーツではあった。
 ついついダラダラし、出かけるのがまた遅くなった。

 指定の待ち合わせ場所の、家電量販店のプラズマテレビ売り場に赴いたが、それらしい人がいなかったので、電話した。
 そしたら、同じコーナーにいると言う。
 辺りを見渡し、携帯電話を耳に当てている人がいたので、すぐに、その人だとわかった。

 想像していたよりも、年が上に見えた。
 それが第一印象。

 とたんに、素知らぬ振りして、その場を立ち去ろうかと、一瞬、思った。
 失礼だけど。

 味相さんと話してみて、いい人そうだとは思った。
 ほのぼのとした感じ。
 でも、あまりにも生活環境や価値観が違い過ぎないか。

 私は、仕事で海外に縁があり、実際に、住んだこともあれば、出張や旅行で出かけることがある。
 しかし、味相さんは、海外に行ったことがないらしいのだ。
 ここは、大きな違いのように感じられた。

 味相さんは、流されるままに生きて来たと言っていた。
 一人で出かけるのも嫌なのだそう。
 誰かと一緒であればいいらしいが。
 「誰か一緒なら、そんな自分も変われる気がする」と。

 悪いが、そんなことを、私に求められても困る。
 それって、結婚で何かが変わると、夢見ている乙女と同じじゃない!?
 いや、私も、その一人なのかな・・・?

 いずれにせよ、味相さんは、受動的でおとなしい人のようだった。
 私は、たぶん、その逆のタイプ。

 自分を変えたいと思って、これまで、文化センターの演劇クラスやダンス教室に通ってきたし、宝石鑑別の通信教育も受講している。
 いい出会いという幸運に恵まれたという感謝はあるが、ちゃんと自分で決めて、いいと信じることを、実行してきたのだ。
 積極的に。

 味相さんは、でも、ヒトはよさそうだった。
 たぶん、素直で、正直な人。

 さりげなく、給与や貯金などの、お金の話もしていた。
 まぁ、正直、どうだろう・・・。
 ますます性格の違いが際立った感じがした。

 私の場合、習い事や遊び、買い物と、勝手気ままな生活をしていて、そのせいで’その月暮らし’を余儀なくされていて、常に金欠で、貯蓄もちゃんとできていない。
 だから、人様のことをあれこれ言う資格はないのだけど、家の購入など、将来のビジョンを聞いていても、方向性が合わない感じがした。
 持ち物にしても、味相さんは、経済的且つ、実用的なものがお好みなのだろうとお見受けした。
 私はそれとは対照的に、P様(みちょるびんが好きなイタリアンブランド)やジュエリー、アンティークなどの眩いものへの憧れが強く、品質よりも、デザインを重視するようなところがある、浮かれ者なのだ。
 今日なんか、光沢のある、黄緑色のツーピースなんかを着ちゃったりなんかしちゃってました。

 ホント、悪い人じゃなさそうなんだけど、堅実な味相さんには、私なんかよりも、他にもっとふさわしい女性がいるはず。
 たぶん、お互いに幸せになれないね。

 今日は、正直なところ、一緒にいて、つまんなかった。
 初めて会った人ってこともあるのだろうけど、話が弾まなかったと思う。
 冗談とか、笑いのセンスも合わなさそうだしね。

 ごめんなさい!

【更に1週間後の日記】

 今日は、ちょっとがんばって仕事したのだ。
 終電の1本前の電車に乗るべく、ホームに向かって、駅の長いエスカレーターで下りていた。

 そこで携帯電話のメールをチェックしていたら、味相氏からのメッセージ。
 散歩でもしないかとの誘い。
 「あれから1週間、連絡せずにごめんね」とあった。

 また、気分が暗くなった。
 「ごめんね」とはどういう意味か。
 私は束縛されている感じがして、すごくいやな気がした。

 すぐに、「忙しいから当分会えない」と返信のメールを打ちかけた。
 でも、それ以上、文章を続ける気になれず、やめた。

 たぶん、それは、失礼だ。
 ごまかすのは良くない。
 うん。
 きちんと対応すべきである。

 あー、また、ユーツになってきた・・・。

【その翌日の日記】

 今日は、おいしいパン屋さんでパンを買って帰った。
 先日、試しに買ってみたパンが、とてもおいしくて、超気に入ったのだ。
 パンを調達するために、わざわざ遠回りして、はるばる、寄り道をしてから帰宅した。

 だが、おいしいパンを食べても、気分はユーツだった。
 ユーツだと、溜まった日記を書くのも面倒になる。
 早く寝ることもできず、ずっとだらだらとテレビを見ていた。

 母・マミーに電話したら、宙海(ちゅうかい)さんに電話してみることを勧められたので、明日、電話してみようと思った。の、だが、やっぱり、ユーツなんだよね・・・。

【更にその翌日の日記】

 今日は、修理に出していた雨傘を引き取り、その帰り、ちょっとリッチなディナーをして、いつもより早めに帰宅した。

 そして、いよいよ、宙海さんへ電話。

 宙海さんは、案外さっぱりしたもんだった。
 そんなもんなのか。

 味相さんは、宙海さんには直接連絡していないようだった。
 しかし、自分の母親には話していたようで、その話は宙海さんにも伝わっていたようだ。

 私が、「会ってから一週間、味相さんからの連絡がなかった」旨伝えたら、味相さんも、いろいろと気を遣って考えていたのだ・・・というようなことを言われた。

 そういえば、味相さんからのメールには「仕事はボチボチだが、プレッシャーに負けた一週間・・・」と書かれてあった。
 もしかすると、味相さんも、私との価値観が違い過ぎると思って、気が重くなっていたのではないか。
 だけど、味相さんは、自分の方から断ることはせず、私に気を遣って、散歩に誘ってくれたのではないか。
 そんな気がした。

 私は、これまでの間、あれこれと思いを巡らしていたが、宙海さんとの電話を切った後、むしろ、素直な気持ちで味相さんにメールを出すことができた。
 味相さんは、悪い人ではない・・・。
 むしろ、いい人、優しい人ではないか・・・。
 そんな味相さんに対し、失礼がないように、きちんと書けた気がする。

 メールを送ってしまったら、それで、もう、このユーツから解放されたような気がして、急に気分が明るくなった。

 だから、実家に電話した。

 父・パピーは、何だか、うれしそうだった。
 パピーも、私に合う人と一緒になってほしいと思っているのだ。
 「半日、一緒にいて、話題が尽きないのが、いい関係」とか何とか、新聞で読んだとパピーが言っていた。

 あー、疲れた。

 溜まっていた日記を、まとめて書いたせいもある。
 そろそろ2時間が経つよ!

                       以上、みちょるびんでした!

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