こんにちは、みちょるびんです。
(前回までのあらすじ)
入社して最初の数年は、一つの夢も実現し、何の疑問もなく、仕事に励んでいたみちょるびん。そんなある日、占いで「将来、商売を始める」「自分を抑制している」と告げられ、仕事に対し、違和感を感じ始めた。学生時代に熱中していた「演劇」に活路を見出し、カルチャースクールの演劇講座を受講。そこで出会ったつるさんに誘われ、新たにダンス教室に通うことになったのだが・・・。
【誕生会の4日前(日記)】
今日は、デッサン会を休んだ。
もうすぐ、ダンスの先生の誕生日で、描いた絵をプレゼントするというアイディアもあったので、画材調達のため、ショッピングに出かけた。
通常、デッサン会では、参加費として3千円、飲み会に4千円、計7千円がかかる。
今日は、休んで、この浮いた費用で、少し買い物でもしようと思った。
ずっと節約生活をしていて、買い物もあまりしていなかったのだ。
お店で売られている小物が、何でもかわいく見えた。
しかし、結局、買ったのは、仕事用の実用的なものだった。
【誕生会の2日前(日記)】
夜は、先生の似顔絵に挑戦した。
明後日の誕生会でプレゼントするかどうかは、出来上がり次第。
下描きの段階では、ダメだと思ったが、色をつけると悪くないように思えた。
ちょっとぽっちゃりした先生だが。
髪の毛は、いつもよりうまく描けた。
【誕生会当日(日記)】
今日はダンスの先生の誕生会。
一応、描いた絵は持って来ていたが、どうしようか迷っていた。
なんとなく、自信もなかったし、第一、先生が喜んでくれるかどうか、判断に迷ったのだ。
職場の同僚数人に絵を見せて、反応を見てみた。
いま一つ。
ただ、人柄のいい先輩と後輩は、二人とも、上手、色がきれいと褒めてくれた。
「先生は、絶対に喜んでくれますよ」と二人が口々に言うので、私も、少し、先生に渡す勇気が出てきた。
夕方、素人ダンス仲間のYさんから電話があり、会場の前で待っているとのことだったので合流した。
誕生会が始まって1時間半が経っていたということもあり、皆、談笑していた。
さんざん、メールのやり取りをして、プレゼントをどうするかを相談したGさんは、結局、小さい植木を用意していた。
Yさんは、手紙にしたらしい。
でも、手ぶらの人も多かったようだった。
いざ、先生に、絵を渡したが、あまりうれしくなさそうだった。
「よく描くんですか?」と訊かれ、悩みながら、「時々」と答えた。
「絵は、ちょっとね・・・」‘重いですよね’的な発言。
やっぱりそうですよね・・・。
先生は、私の絵自体があまり好きではなかったようだ。
私もねー、どうかなぁと、自分でも思っていたわけ。
でも―――。
少しふっくらしているけど、まぁまぁ似ていると思うのだ。
私としては、真剣に、丁寧に描いたつもり。
背景も、‘未来が明るく開けている’というイメージで描いたし、明るいきれいな色だと思うのだが。
個人的には、髪の毛の直毛の感じが、今までデッサンしてきた中で、今回が一番上手に描けたと自負している。
職場の気のいい先輩は、「生きているみたい、動き出しそう」とまで言ってくれた。
私も、そういう躍動感とでもいうか、そういうのは、表現できたのではないかと思う。
そうそう、ベタッと死んでないの、活き活きした感じ。
あーあ。
自画自賛になっているね。
「駅の周辺で見かける‘似顔絵’みたい」とも後輩が言っていたね。
お調子者の私は、誉め言葉として、受け取っていたが。
そう。
本当は、少しだけ、先生にアピールしたかったんだよね。
絵を描くのも好きなんですって。
ちょっと、褒めてもらいたかったんだよね、先生に。
もちろん、先生の誕生日を祝いたかったし、あれこれ悩んで、最終的に、絵をプレゼントすることに決めたのだ。
これは、純粋な気持ち。
だけどやっぱり、「『褒めてほしい、先生に注目してほしい』という願望がなかった」と言ったら、ウソになる。
それが、きっと、敏感で、勘が鋭い先生には伝わったのでしょうね。
そのイヤラシさが。
モジモジしながら絵を渡すところが、逆に自意識過剰な感じがして、イヤラシかったのでしょう。
Yさんは、帰り際、今日の誕生会では、私の絵に感動したと言ってくれた。
Yさんは、純粋だ。
私の不純な思惑には、気づいていないのだと思う。
そういうところが、彼女の魅力である。
「みちょるびんさんは、何でもできるんですねー。」
Yさんはそう言ったが、私は、その言葉を先生に言わせたかったのかも知れない。
まだまだな、私。
最後に。
誕生会には、有名な芸能人も来ていた。
バースデーケーキが登場した際、彼は、皆の音頭をとり、「Happy Birthday to You」を皆に合唱させた。
そして先生に、歌に合わせ、即興ダンスを踊ってほしい旨リクエストした。
アップテンポにもして、2回歌ったのだが、先生は、最後まで踊らなかった。
きっと、私なら踊ったと思う。
笑いと言うか、その場を盛り上げるために。
だけど、先生はしなかった。
プライドもあったのだろう。
いつだったか、先生が言っていたように、プロとして、適当には、踊れないというのがあったに違いない。
それに、あの曲は、即興で踊るには、難しいように思う。
マリリン・モンローのような、エンターテイメントを求めるのは難しそうだ。
先生が踊らかなった理由を何やら言っていたようだが、よく聞こえなかった。
まぁ、ある種、ご同情申し上げます。
以上、みちょるびんでした!