ダンス! 第一次仕事イヤイヤ期

第一次仕事イヤイヤ期(その148:「即席即興バトル!」その5編)

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こんにちは、みちょるびんです。

(前回までのあらすじ)
入社して最初の数年は、一つの夢も実現し、何の疑問もなく、仕事に励んでいたみちょるびん。そんなある日、占いで「将来、商売を始める」「自分を抑制している」と告げられ、仕事に対し、違和感を感じ始めた。学生時代に熱中していた「演劇」に活路を見出し、カルチャースクールの演劇講座を受講。そこで出会ったつるさんに誘われ、新たにダンス教室に通うことになったのだが・・・。

【即興バトル、4日前の日記(後編)】

 着替えを終え、「即席即興バトル」におけるソロ出演が決定した感覚派プロダンサーKさんは、気分がスッキリしたといった様子だった。
 なぜなら、Kさんは、先週の時点では、オーディションを受けることすら迷っていたのだから。

 その一方で、私は、ちっともスッキリしなかった。

 それで、先生たちがいらっしゃる、いつものカフェに立ち寄り、そこにいたTくんに、もう一度、改めて問うてみた。
 実際のところ、Tくん自身はどうしたいのか、Tくんの本音を。

 Tくんは、「一緒に組んでは、お互いに個性を殺し合うだろう」と言った。

 それがTくんの答え。
 最初からわかっていたことだ。

 私は、先生に、「即席即興バトル」参加の辞退を申し出た。

 せっかくの機会であり、私自身、当日は、休暇まで取って楽しみにしていたことだった。
 もちろん、簡単な決断ではない。
 それに、私にとっては、’ソロ’で挑戦するよりかは、ただ調子を合わせればいいという観点からは、Tくんと一緒に組むことは、楽な選択であった。

 しかし、1回目の先週のオーディションで、一番に、しかも、一発合格できたのはTくんだけだったし、仲の良いTくんのこれまでの苦労や努力を考えると、「一緒にやらせろ」とお願いするのは、Tくんに対し申し訳ないと思ったのだった。

 ならば、出ない方がいい―――。

 先生をはじめ、その場にいた皆は、とても驚いた様子だった。
 よもや、私が辞退すると言い出すとは、思わなかっただろう。

 すると先生は、「ダイちゃん・はっちゃんペアに加わるように」と言った。

 ただ、そうなってくると、私は、自分がたらい回しにされている感じがいやだったし、’ほんわか、かわいい’イメージのダイちゃん・はっちゃんペアと自分では、’キャラ’も全然違うだろうと思って、その提案にもがっかりしたのだった。

 先生は、「即興で踊るのだから、曲を知らなくてもいいだろう」とか言われたが、皆、自分の好きな曲で臨むわけで、「バトル」はトーナメント方式なわけで、出るからには、勝ちに行きたいし、ある程度準備したいではないか。
 衣装のことだってあるし。

 そもそも先生は、「観客から料金をいただくのだから、適当なことはできない」とおっしゃりながら、私に、安易に、「ダイちゃんペアに加われ」だなんて、矛盾しているじゃないか。

 ダイちゃんは、心優しいので、「みちょるびんさんが出場しないと、皆、つまらないと思う」と言ってくれた。
 私は、ダイちゃんの思いやりに感謝したが、終電の時間が迫っていたし、今、この1、2分の間に心の整理をして、決断することはできないと思った。
 「とにかく、終電だから」と、足早にその場を立ち去った。

 駅に向かいながら、気分は落ち込んでいた。

 ダンス教室に来る前に寄ってきた妹んちのMDプレイヤーが壊れていて、十分に、踊りの練習ができなかったのは、ある意味、幸いだった。
 それでも、何だか、バカバカしいというか、’合格’などと書かれたハチマキまで頭に巻いて、’哀れ’と言うか。

 旅行帰りのキャリーバッグを引く手が、いつも以上に重く感じられた。

 駅に着いた時は、もうすぐにでも電車が到着しておかしくない時間だった。
 私はあわてて、自動券売機の投入口に300円を押し込んだ。
 出て来た切符を、ひったくるようにして掴んで、改札に向かう時、釣銭が落ちてくる音が背後でしたが、構わずそのまま進んだ。

 後で、財布の中を確認したところ、どうやら、100円玉と間違って、500円玉を券売機に投入していたようだった。
 背後に聞いたじゃらじゃらの音は、私の釣銭だったようだ。
 たかだか400円のロスとは言え、ますますみじめな気持ちになった。

 家に帰って、気持ちが収まらず、妹に電話した。
 妹からは、「生徒のくせして、先生の言う通りにすべきだったのだ」と怒られた。

 それはわかっていたのだが、気持ちが割り切れないのだ。
 プロのダンサーになるつもりはないくせに、プロの人たちに張り合い、悔しいという気持ちになる。
 本当に、勝手なものである。

 ダンス教室から帰って来る途中に、携帯電話のバッテリーが切れたので、家で充電していたところ、夜中の2時頃になって、先生から2回も伝言をもらっていたことに気づいた。

 持ち時間の3分のうち、最初の1分間を、ダイちゃん・はっちゃんペアが踊り、その次の1分間を私が一人で踊り、最後、また三人で合せて踊ればいいという内容だった。
 1分間は、私の好きなように踊っていいと。

 ダイちゃんは、この提案を知っているのだろうか?

 私はますます、恐縮した。
 そうまで言われると、今度はかえって、私が一人、我がままを言って、駄駄をこねているように聞こえ、感じ悪い。
 それに、たとえ1分間であったとしても、「ダイちゃん・はっちゃんの枠」なのだから、私がソロで踊るわけにはいかない。

 そう、思った。

                             以上、みちょるびんでした!

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