ファッション関係

消印、有効!(下)

投稿日:2021年10月24日 更新日:

こんにちは、みちょるびんです。

【ある日の日記(後編)】

 ラグジュアリー女性誌のプレゼント応募に有効な「消印」は、今日の日付。
 郵便ポストにハガキを投函するにあたり、まずは、郵便物の集荷時間が気になるところだ。

 私は、時間がないと思い、この際、ノーメークで家を出た。
 出かけるのは家の近所とは言え、ノーメークでの外出は、普段ないことである。

 コンビニで先に切手を買い、郵便ポストに向かった。
 駅前にひっそりと佇む、錆びれたポスト。

 念のために、集荷日時を確認したところ、
「平日は16:50、18:50。休日は、14:30」と2パターンしかなかった。
 つまり、今日、土曜日に関する表記はなかった。

 「今日は、平日ですか? 休日ですか?」
 道行く人々に問いかけたくなった。

 どうしたものか。
 時刻は、そろそろ16時半。

 このまま投函してしまい、後で、「実は、今日(土曜日)は、’休日扱い’だった」ということになると、せっかくの苦労が水の泡ではないか。
 ここは一つ、慎重に行動した方がいいと思った。
 場合によっては、大きな街に繰り出し、郵便局を探し求める必要もあろう。
 家に戻って、化粧もせねばなるまい。

 それにしても、腹が減ったが、この緊急事態。
 腹を満たすのは、投函した後に回さざるを得ないだろう。
 とりあえず、近場の郵便局を探すために、一旦、家に戻った方がよさそうだ・・・。

 そんなことを考え、横断歩道に向かったところ、ちょうど、交差点にある信号で、郵便局の赤い車が信号待ちしているのが目に飛び込んできた。
 私は車に駆け寄り、「今日は平日ですか? 休日ですか?」と郵便局員に訊ねたい衝動に駆られたが、そんなことをしては頭のおかしいおばさんだと思われかねないし、怪しまれる。
 と、言うか、そこまでしてプレゼント企画に応募したい自分が怖いのと、ならば何故もっと早く対応しなかったのだと反省させられる。

 たかが、トークショーの応募ごときで(しかも当たるかどうかすらわからない)、非常識な行動をとることは、やはり、控えた方が良かろう。
 私は、ぐっとこらえた。

 しかし、私は、その郵便車の行き先がとても気になって、その場に佇み、じーっと、恨めしい目で車を眺めていた。
 おそらく、殺気立っていたのに違いない。
 運転をしていた車の中の郵便局員と目が合った。
 すぐに、目をそらされたが。
 当然か。

 車は無情にも動き出し、駅前のポストがあるのとは反対の車線に侵入して、そのままポストを通り過ぎて行ったのだった。

 時刻は、16時半。
 私は、「もしや!?」と、ある仮説がひらめいた。

 あの郵便車は、この辺一帯にある郵便ポストを回っているのではないか。
 近場で集荷した後に、Uターンして、再び、この場(駅前のポスト)に戻って来るのではないか?
 だから、駅前のポストの集荷時間は、今から20分後の「16:50」なんじゃないか!?

 それは、十分にありえることだと思った。

 郵便車の走り去った方向に視線を移すと、数百メートル先の道路の脇に、赤い車が停車しているのが見え、その後、走り去った。
 私は、あれは、郵便車だったのではないかと思った。
 そして、私の推理が正しければ、あそこには、郵便ポストがあるんじゃないかと思った。

 私は、ノーメークであり、できるだけ行動範囲は狭めたいところだったのだが、確かめずにはいられなかった。
 私は、自然に、その方向に向かって歩き出していた。
 赤い車が停まっていたと思われる場所を目指して。

 そして、その赤い箱はあった!
 私が睨んだとおり!!

 郵便ポストは、駅前のそれよりもまだ新しく、それが何だか、利用頻度がより高いもののように感じられた。
 こんな近くに隣接するポストなので、古い、新しいなどは関係なく、同じ周期で集荷されているのではないか。

 さて、ポストは新しいだけあって、集荷日時の表記も、「平日」「休日」以外に「土曜日」についても明記されていた。

 このポストの土曜日の集荷時間は、「16:30と18:30」とある。
 これで間違いない。
 やはり、私が遠くから見かけたさっきの赤い車は、郵便車であり、あのときに、集荷していたのだ。
 土曜日の「16:30と18:30」に集荷があるということは、あの駅前のポストも同様に、土曜日に夕方2回、集荷されるのだろう。
 だから、あちらの方の集荷時間は、20分遅れの「16:50と18:50」。

 駅前ポストの「土曜日は、平日? or 休日?」問題が晴れて解決したとは言え、せっかく目の前に、確実に「土曜日集荷」と明記されているポストがあるのだから、ここで投函しない手はない。

 これで、今日の「消印」はもらった!!

 私は、ポストに向かって心の中で手を合わせて拝み、4通のハガキと封書を投函した。
 どれか1つでも、当たりますように!

 そして、はたと気づいた。
 今、自分が投げ込んだのは「大型郵便」の受け口であるということを。

 本当に、私は、こういうところが、脇が甘い。
 これが本日最後の集荷というのに、違う受け口に投函してしまったことで、「今日の消印」がもらえなくなるんじゃないか・・・。
 急に不安になった。

 また2時間後の集荷時間に舞い戻り、郵便局員を待ち伏せすることも頭によぎった。
 いやいや、この時代、機械が識別、分類するだろうし、そんなことで、処理が遅れるというようなことはないだろう・・・!!!

 もう、これ以上は、考えない方が良かろう。

 家路に向かう途中、ちょうど、いいにおいを漂わせて焼き鳥を焼いている屋台があったので、腹も減っていたし、私は、焼き鳥を買って帰ることにした。

 そして、再び、駅の交差点にさしかかった時、反対の歩道にある、あの駅前の郵便ポストから集荷したばかりの郵便局員が立ち去ろうとしている姿を目撃した。

 只今の時刻、18時50分。
 やっぱり、私の仮説は間違っていなかったのだ。

 私は、一瞬、「投函口を間違えましたが、大丈夫でしょうか?」と郵便局員に駆け寄りたい衝動に駆られたが、もちろん、ぐっとこらえた。

 それにしても、普段は、郵便車なんて、この辺で見たこともないのに、今日は、こんなにも目撃して、不思議なものである。

 やっぱり、私って、こういう’引き寄せる’力があるのかなぁ。
 なんてね。

 ’当てる’力も欲しいーっ!!

                            以上、みちょるびんでした!

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