こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」に続く第6弾です!!
サンゴ
「誕生石」は、国によって少しずつ異なるということをご存じでしょうか?
「日本の誕生石」は、1958年にアメリカの宝石商組合(現在のジュエラーズ・オブ・アメリカ)が定めた誕生石を基本に制定されたものだそうですが、もともと、日本が独自に加えていた誕生石として、3月の「サンゴ」と5月の「ヒスイ」の2石がありました。
サンゴは、我が国では数少ない、貴重な特産宝石の1つです。
そんな我が国が世界に誇れる宝石「サンゴ」を、ちゃんと、「日本の誕生石」に加えているというのが、みちょるびん的にはうれしいし、「そう来なくっちゃっ!」って思います!!
さて、宝石の多くは鉱物であり、無機質なものですが、対照的に「サンゴ」は、生物を由来とした有機質の宝石で、それが「サンゴ」の大きな特徴と言えます。
サンゴは、南海に住む‘サンゴ虫’の残存骨格で、主成分は炭酸カルシウム。
モース硬度は3.5で、真珠は4なので、サンゴは真珠も柔らかいということになります。
サンゴは、古くは、地中海(イタリア)で産出されていたのが有名で、我が国では、「古渡サンゴ」として親しまれていたそうです。
地中海に生息する種は、レッド・コーラル(ベニサンゴ)と呼ばれており、濃い赤のものも採れますが、実際には主にホワイトとピンクが中心です。
色がより赤くなるにつれて、その価値は上がり、最も価値あるとされるのは、「オックス・ブラッド」(雄牛の血)を呼ばれる鮮烈な赤になります。
そして、貴重なサンゴとして見逃してはならないのが、サンゴ商人が「エンジェル・スキン」(天使の肌)と呼ぶ、薄いピンク色のもの。
何を隠そう、実はこれ、元は日本産のサンゴなのです!
突然ですが、「かんざし」が、日本人女性の髪を華やかに飾ってきた、日本の伝統的な装身具であることは、皆さんもご存知のとおりです。
そのかんざしも、江戸時代中期までは、櫛や笄(こうがい)が中心で、脇役でした。
しかし、江戸後期になり、かんざしが髪を華やかに飾る主役級として脚光を浴びるようになったのだそうです。
さまざまな種類のかんざしが生まれましたが、その中の1つに「玉かんざし」と呼ばれるものがあります。
「玉かんざし」と言えば、「サンゴ」が思い浮かばれるほど、サンゴが多く使われていたらしく、サンゴは、昭和初期まで日本髪を飾った代表的玉かんざしになるのだそうです。
実はそれまで、サンゴは、ジュエリーというよりは、アクセサリーとして親しまれていたらしく、江戸中期では、主に男性が腰に提げる巾着や印籠の緒締玉に使い、女性の髪飾りに用いられることはほとんどなかったのだそうです。
さて、サンゴの玉かんざしは、身分の上下に関係なく大流行し、模造サンゴが出回るほどだったそう。
中には、中国に輸出されたものまであり、つまりは、当時、それほどまでに、サンゴ人気が白熱していたということでしょう。
そんな中に起こった出来事として、画期的だったのは、土佐(高知)で宝石サンゴが採れるようになったことです。
そのおかげで、明治になると、玉かんざしや根掛玉として人気の高かったサンゴは、これまでの地中海サンゴだけではなく、国産の土佐サンゴでも作られるようになったそうです。
そして、更に明治中期には、土佐以外にも肥前(長崎)、薩摩(鹿児島)と新たなサンゴ漁場が開拓され、国内採取が盛んになりました。
中でも明治30年頃から42年頃にわたる十数年間は、最も隆盛を極めた時期で、イタリア、中国などに大量輸出(原木のままで)するまでに成長したそうです。
そして明治27年、遂には「輸入の時代」が終焉を迎え、「国産サンゴの時代」に突入したのでした。
なお、日本産のサンゴは地中海サンゴと比べて大きく、色も豊富。
赤、桃色、白といろいろあり、単色しか知らなかった西洋人には大変珍しかったのだそう。
中でもピンクがかった肌色に似た「モモイロサンンゴ」は特に西洋人の好むところで、この色調のサンゴを「エンジェル・スキン」(天使の肌)と呼んで愛好したそうです。
日本ではこのサンゴを「ボケ」と呼んでいますが、「色がぼけている」に由来すると考えられています。
一説によると、「モモイロサンゴ」の美しさに圧倒されたイタリア商人が、商売の駆け引きのために「色あせた、つまらない」とさげすんだことから、「ボケ」になったとも言われているようです。
以上、日本におけるサンゴの歴史は、「詳説 日本の宝飾文化史」(2019年、露木宏著)を参考にさせていただきました。
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石の実用知識」(1995年、川上周二著)
「詳説 日本の宝飾文化史」(2019年、露木宏著)