こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)「ヒスイ」「真珠」に続く、第17弾!!
ムーンストーン
なんとっ!! ここにも、「グループ」がいましたかっ!?
「ムーンストーン」は、「フェルドスパー」の変種なのですが、この「フェルドスパー」というのが、「ガーネット」と同じく「‘同じ結晶構造’ではあるが、‘わずかに異なる化学組成’を持つ鉱物から成る『グループ』」の名称なのです☆
ガーネットの紹介の際、「『ガーネット』の他に‘グループ’(活動している石)はない」などと力説していただけに、ちょっとバツが悪いですね・・・。
失礼いたしました!
「フェルドスパー」は、鉱物の中でも、最も分布が広く、ほとんど全ての火成岩に含まれているのだそうで、なんと、地殻の重量の50%をフェルドスパーが占めるのだとか。
「フェルドスパー」の中には、ジュエリーに適したものもあれば、そうでないものもあるそうですが、「化学組成」のわずかな違いが、石の外観の違いを生んでいるのだそうです。
「ムーンストーン」は、フェルドスパーに属する2つの種「オーソクレイズ」と「アルバイト」が、交互に層状に積層固化したものです。
光が、ムーンストーンの薄い層の間に入射するとき、光が様々な方向に散乱し、月の光にも似た神秘的な光が生み出されることになります。
宝石を波打つように横切る、この光の反射は「アデュラレッセンス」と呼ばれ、ムーンストーンの独特な光彩となっています。
アデュラレッセンスは、石中のアルバイトが薄いと青色の光が増し、厚くなると白色を呈することになります。
通常、ムーンストーンの地色は、乳白色ですが、ピンクやグリーンのものもあります。
また、中には「キャッツ・アイ」効果や、4条の「スター」を呈するものもあるそうです。
なお、最高品質のムーンストーンは、無色で、亜透明からほぼ透明で、ビビッドなブルーのアデュラレッセンスを示すものになります。
さて、ムーンストーンは、‘月の光’でできているなどの言い伝えも多く、古くから、お守りにもされるなどして、人々に大切にされてきました。
例えば、インドでは幸運を招く‘聖なる石’とみなされているそうです。
恋人への贈り物としても人気があり、石が、二人を待ち受ける幸運や不運を読む力を授けてくれると、信じられているそうです。
しかし、その運命を知るためには、満月の時に石を口に含んでいなければならないという条件付きなのだそう。
このように、ムーンストーンは、神秘的な力を持つ‘パワーストーン’としても、根強い人気はあるのですが、ジュエリーとして考えたときには、どうしても、ダイアモンドや三大宝石のルビー・サファイア・エメラルドに押されているという印象もあります・・・。
品のある柔らかい光の、涼やかな石なので、煌々と主張の強い石たちの陰に隠れやすいのかも知れませんね。
でも、そんな慎ましいムーンストーンが、華々しく、脚光を浴びた時代があったのです!
それは、19世紀末から20世紀初頭のことでした。
フランス語で「新しい芸術」という意味を指す、「アール・ヌーヴォー」。
ヨーロッパ各国に広がった国際的な美術運動です。
産業革命によって、機械で大量生産された粗悪の製品が出回ったことに反して、職人の手仕事を見直そうとイギリスで興った「アーツ・アンド・クラフツ運動」に端を発したもので、家具や食器、建築、商業ポスターまでも含んだ総合芸術になりました。
このアール・ヌーボーでは、実は、ムーンストーンが、ジュエリー素材の1つとして好まれて使われていたんです。
アール・ヌーボー・ジュエリーに好まれたモチーフは、自然である花や昆虫、動物などでした。
そのため、ジュエリー素材自体も、それらのモチーフに合うものが選ばれ、動物の角、オパール、エナメル、ムーンストーン、ペースト・ガラス、カルセドニー、クリソプレーズ、アゲート、パールなどが、多く使われたのです。
逆に、ダイアモンドや色石などの高額な宝石は、避けられた格好でした。
ルネ・ラリックが作ったジュエリーは、ヨーロッパやアメリカのジュエラーたちの手本となり、当時は、「ティファニー社」や「マーカス社」といったアメリカのジュエラーも、エナメルや半貴石の使用で特徴づけられる‘アート・ジュエリー’を専門としたそうです。
また、スカンジナビアでは、「ジョージ・ジェンセン」がシルバーを使って、自然界の流動的で豊かな様式化を行っており、そのテイストは、今でも、ムーンストーンを使うなどして表現されていると思います♪
素敵ですね!
それでは最後に、メンバー紹介。
同じ「フェルドスパー・グループ」の中には、蝶の羽にあるような光を放つ「ラブラドライト」、金属的な躍動感あふれるキラキラとした光を放つ「サンストーン」、ソーダ水のようなさわやかな水色をした「アマゾナイト」等がおり、とても個性豊かな顔ぶれとなっています。
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「宝石と鉱物の文化誌」(ジョージ・F・クンツ著、2011年、鏡リュウジ監訳)
「Understanding Jewellery」
(2004年、デイヴィッド・ベネット/ダニエラ・マセッティ共著)