ファッション関係 宝石

新☆誕生石!(15:5月の誕生石)

投稿日:2022年2月5日 更新日:

 こんにちは、みちょるびんです。

 「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!

 「ガーネット(1)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1)」「タンザナイト」「アイオライト」「エメラルド」(「日本の国石」)に続く、第15弾!!

ヒスイ

 我が国において、ヒスイの歴史は、なかなかドラマティックなものがあります。
 お隣の中国や遠い中南米のアステカ文明では、ヒスイは何千年も前から珍重されてきましたが、我が国では、ちょっと変わった歴史があります。

 まず、ヒスイは、サンゴと並んで戦前の日本人が最も親しんだ宝石と言われています。

 主に、かんざしの玉や帯留めなど和装の装身具に使われ、広く用いられるようになったのは、明治40年頃だと言われています。
 当時、ヒスイは、ビルマ(現ミャンマー)から輸入されており、大正期になると、サンゴを凌ぐほどの人気になったのだそうです。

 そんなヒスイですが、珍重されていたのは、何も最近だけの話ではありません。
 古墳時代でも、ヒスイは、その存在感を示しています。

 突然ですが、皆さんも「勾玉(まがたま)」という言葉を聞かれたことがあると思います。
 英文で使われる‘カンマ’(日本語でいうところの読点)に似たような形をした、いわゆる「ビーズ」です。
 「まがっている‘玉’」ということで、「勾玉」です。

 「玉」とは、考古学研究では、「孔が明けられていて人体装飾に用いるもの」を言うのだそうで、当時は、首飾り、手玉(ブレスレット)、足玉(アンクレット)として使用されていたようです。

 当時貴重であった「玉」は、王権の権威を示す「威信財」として、王権から地方豪族に下賜されたと言われています。
 天皇家の重宝として知られている「三種の神器」は「鏡」「剣」「玉」から成りますが、この組み合わせは、古墳の副葬品の代表格。
 色鮮やかなメノウ玉等が登場する前は、「ヒスイ製勾玉(琥珀製勾玉)と碧玉(メノウの不透明石)製管玉」のセットが、全国の有力な前方後円墳などから出土されているそうです。

 ところが、です。
 7世紀以降は、古墳における玉の副葬はほとんど見られなくなり、「玉」は寺院の鎮壇具や装飾品の利用に限定されていくことになったのだそうです。

 実はその頃、お隣では、漢民族が強大な王朝「隋」や「唐」を築いており、日本の王権は、隋王朝や唐王朝を見習うということをしたそうで。
 「ビーズ文化を保持しない」として知られる漢民族、その影響のため、遂に、それまで「威信財」として利用されていた‘玉文化’は、すたれることになったのだそうです。

 それ以来、約1000年にわたり、日本列島の大部分で「玉文化」が失われてしまったということです(琉球列島やアイヌ民族は独自の玉文化を保有していたと言われています)。

 さて、明治に入り、大流行を見せたヒスイですが、これは外国から輸入されたものでした。

 我が国では、ヒスイは産出されないと考えられており、古代日本で使われていたヒスイも、長い間、輸入品だと考えられていました。
 ところが、昭和に入り、実は全て、それは国産品であったということが分かったのです。

 1935年(昭和10年)に新潟県糸魚川でヒスイが発見され、その後の専門家の調べで、明らかになったのでした。
 びっくり!

 驚きついでに、ヒスイは、何世紀もの間、単一種の宝石と考えられていましたが、1863年に、ジェイダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)の2種類に分類できることが分かりました!!

 日本で一般的にヒスイと呼ばれるものは、ジェイダイトで、糸魚川産のものも、これにあたります。
 ついでに言うと、気になるミャンマー産。
 トップクオリティのジェイダイトは今も、ミャンマーが主要産地なのだそうです、良かった!

 しかし、中国で「玉(ユウ)」と呼ばれ、約3000年前の古い時代から種々の玉器に製作され、珍重されてきたものは、ネフライトであったということです。

 なかなか、混乱が続きますね・・・。
 わずか、160年前ですもんね、「ジェイダイト」と「ネフライト」が別物だと判明したのは。

 ヒスイ(ジェイダイト)は、そもそも、ネフライトと区別しなければならないという点もありますし、また、人気があるが故に、代替品も多い石です。
 うかうかできませんので、注意しましょう。

 ジェイダイトは、色もですが、透明度がより重視され、亜透明が最高級とされます。
 透明度を判断する場合、バイヤーは、ジェイダイトを印刷物の上に置き、下の文字が読めるかどうかを試すそうです。

 バングル等、直接肌の上に身に着けることも多いため、キメも重要な要素となります。

 ワックスに浸け、光沢を向上させるという処理は、古くから行われており、伝統的なジェイドの加工法として受け入れられています。
 しかし、漂白や染色が施されるものもあり、本来、そういった処理は開示されるべきですが、中には、その事実が開示されないまま販売されるケースもあるそう。
 これも、注意です!

  最後に、ジェイドは、靭性(割れの強度)が高いことで有名です。
 硬度がさほど高くなく柔らかいため、彫刻が施しやすい傍ら、割れには強いというところも、ジェイドの大きな特徴であり、魅力となっています。

                            以上、みちょるびんでした!

【参考文献】
「島根県立古代出雲歴史博物館企画展 古墳文化の珠玉 玉は語る出雲の煌めき」
                   (2019年、島根県立古代出雲歴史博物館)
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「詳説 日本の宝飾文化史」(2019年、露木宏著)

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