こんにちは、みちょるびんです。
「日本の誕生石」が63年ぶりに改定されました。宝石鑑別のディプロマを持つみちょるびんが、「誕生石」として選ばれた‘栄えある宝石’たちについて、独断と偏見を交えながらご紹介したいと思います!
「ガーネット(1&2)」「クリソベリル」「アメシスト」「アクアマリン」「モルガナイト」「サンゴ」「ブラッドストーン」「サードニクス」「ダイアモンド(1&2)」「タンザナイト」に続く、第12弾!!
アイオライト
みちょるびんが、宝石に興味を持ち始めた頃のお話―――。
みちょるびんは、本屋さんで買った、きれいな写真がたくさん載っている宝石の本のページをパラパラとめくっては、美しい未知の宝石にうっとりしていました。
そんな中、特に、みちょるびんの印象に残った宝石がありました。
正面から見るとサファイアのように青いのだけれど、横から見ると、無色透明に見えるという石です。
どういうことなのか、よくわかりませんでしたが、ただただ、世の中には、不思議な石があるということに驚いたのでした。
「一度でいいから見てみたい」、そう思って、いつか出会った時のためにと覚えていたのが「ウォーター・サファイア」という名前。
それが、3月の誕生石「アイオライト」です。
「ウォーター・サファイア」というのは、いわゆる俗名で、「コーディエライト」(和名:菫青石)という、れっきとした鉱物学上の名称もあるのですが、宝石品質のものは、「アイオライト」という名で流通しています。
これは、「ion」というギリシャ語で‘バイオレット’を意味する言葉に由来しています。
その後、みちょるびんには、「アイオライト」を見る機会を得ることができ、本の説明にあったとおり、見る角度で異なる色が現れ、感動した記憶があります。
アイオライトは、気に入ったデザインのジュエリーに出会えれば、いつかは手に入れたいと思っている宝石の1つ。
みちょるびんにとっては、その日まで、本当は内緒にしておきたいと思う、ユニークな石ですが、今や、アイオライトもとうとう、「誕生石」としてメジャーデビュー(?)しちゃったという感じ。
うれしいような、寂しいような・・・、複雑な気分です。
さて、1967年に、タンザニアでブルー・ゾイサイト(タンザナイト)が発見され、それが何の石かを調べる際、専門家たちは、その特徴からまず、「コーディエライト」ではないかと疑ったそうです。
なぜなら、その石が、「コーディエライト」と同じように青色の透明石で、そして何より、多色性を有していたからです。
そうなんです、アイオライトの大きな特徴というのが、「多色性」が顕著であるという点。
3方向で、明らかに色相が異なるのです。
紫色がかったアイオライトは、「淡いバイオレット」「暗いバイオレット」「黄褐色」を、青みがかったアイオライトは、「無色から黄色」「ブルー・グレー」「暗いバイオレット」という感じです。
この特徴は、タンザナイトの場合と同じように、石をカットする際、フェイス・アップで最も魅力的なブルー・カラーが現れるように、カッターに細心の注意を払わせることになります。
上から見ると青いが、横から見ると透明・・・っていう、あれですね。
1990年代、宝石卸業者は、小売業者に対して、アイオライトの販売に力を入れたのだそうです。
その背景には、タンザナイトの人気がありました。
タンザナイトの価格が急騰したため、タンザナイトの「代替品」として、より費用対効果の高い、アイオライトを押そうとしたのだそうです。
しかし結局、アイオライトは、タンザナイトのように、プロモーションに成功はしなかったのだそうです。
またしても、「代替品」・・・。
今度は、タンザナイトの・・・。
そもそも、アイオライトは、「ウォーター・サファイア」というフォールスネーム(見た目が似ている別の宝石の名前が使われた呼び名)までついており、人気の宝石の陰に隠れている印象です。
どうしても、人気の石は値段が高いので、ルックスが似ている宝石は、人気の石の代替品に祭り上げられる運命にあるようです。
だけど、今は、個性の時代。
「似せよう」とするから、個性を隠さなきゃならなくなるんですよね。
アイオライトほど、見る角度で顕著に色が異なる石も珍しいですし、このアイオライトならではの美しい特徴を、存分に楽しみたいものです。
また、アイオライトは‘似せたい’タンザナイトとは異なり、熱処理などは施されないので、つまりは、石の色が天然であるいという点も、ポイント高いところです。
最後に、ツウな話―――。
菅原道真公のゆかりのとして知られ、天然記念物としても指定されている通称「桜石」。
形が桜の花に見えることに由来するそうですが、実はこの石、アイオライトが風化してできたものなんだそうです!
これも、アイオライト自慢!!
以上、みちょるびんでした!
【参考文献】
「宝石 その美と科学」(1972年、近山晶著)
「楽しい鉱物図鑑」(1992年、堀秀道著)
「詳説 日本の宝飾文化史」(2019年、露木宏著)
「宝石の実用知識」(1995年、川上周二著)