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「或る列車」(おまけ)

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 こんにちは、みちょるびんです。

 「或る列車」が終着駅の湯布院に到着したのは、14時過ぎ。
 湯布院駅で下車したみちょるびんと母・マミーは、タクシーを捕まえて、湯布院温泉の旅館に向かいました。

 タクシーの中から温泉街の様子を見て驚いたのは、その人の多さ。
 「今日は、何かのお祭りですか!?」と、タクシー運転手さんに訊ねてしまったほどの賑わいぶりでした。
 ウィルスのなかった頃に戻ったような、そんな錯覚に陥りそうな光景でした。

 チェックイン時間にはまだ少し早かったので、みちょるびんたちは旅館の受付で荷物を預かってもらい、観光に出かけました。

 湯布院温泉はスイーツが有名なのだそうで、おいしそうな看板がたくさん出ていました。
 しかし、みちょるびんたちは、「或る列車」で豪華なお食事を終えて来たばかり。
 満腹指数は100%を超えていたし、数時間後には旅館のおいしい夜ごはんも控えていたので、スイーツは封印して、観光に徹することにしたのでした。

 「山下清原画展」も開催されていた昭和レトロパーク「湯布院昭和館」を楽しむなどし、更に足を延ばして、湯布院を代表する観光スポットの1つ「金鱗湖」にも行ってみました。

 「金鱗湖」湖畔にある「天祖神社」に到着した頃には、厚く雲がかかり、とうとうポツポツと小雨が降り出しました。
 そろそろ日も暮れようとしていましたし、みちょるびんたちは観光を切り上げ、すぐに旅館に引き返すことにしました。

 神社のすぐ近くの湖上には、古い石でできた鳥居が浮かんでいて、とても神秘的。
 そして、その鳥居の上の両端には、大きな黒い鳥が2羽留まっていて、湖に向かって鳴きながら、羽を広げていました。

 2羽とも同じ格好をしていたので、一瞬、置物かと目を疑ったほど。
 奇妙な光景でした。

 しばらくすると、2羽は一斉に飛び立って、どこかに飛んでいってしまいましたが、なんだか見てはいけないものを見てしまったような、そんな不吉な感じもありました。
 何かの前触れなのか・・・。

 その後、降り出した雨は、全く止む気配がなく、それどころか、激しい雨に変わっていきました。
 後で知ったのですが、「或る列車」で通って来た、頭の平らな山「伐株山」のあった一帯・玖珠町付近では、夜中の3時40分までの1時間に約120mmの猛烈な雨が降ったらしく、気象庁が記録的短時間大雨情報を発表していました。
 また、大分県北部・西部では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているとして、3時50分には「顕著な大雨に関する情報」を発表したそうです。

 そんなことなど露とも知らないみちょるびんとマミーは、旅館の部屋で呑気に休んいたわけですが、朝の5時頃、大きな警報音によって起こされました。
 旅館の警報なのかと心配になり、受付のところに情報収集に行ったのですが、どうやら、携帯電話が避難勧告を知らせるものだったようでした。

 結局は、そのまま何もせずに朝を迎えることになり―――。
 朝ごはんの頃になると、そのピークは過ぎたようにも見えましたが、相変わらずまだ雨は降り続けていました。

 みちょるびんたちが、旅館の待ち合いスペースで食後のコーヒーを飲んでいると、3人組の女の人たちがやってきました。
 なんと前日の「或る列車」で、立ち話をした、あのおばさんとその娘さんたちでした(「『或る列車』(6)」)。
 しかも、遅れて我々の輪に加わってきた老夫婦も、同じく「或る列車」の乗客だったのだそう。

 奇しくも、同じ「或る列車」の乗客のうち3組が、同じ旅館に宿泊していたのでした。
 湯布院には他にもたくさんの旅館があるというのにね!
 なんとも不思議なご縁!!

 皆で、この不思議な巡り合わせについてひとしきり話したあと、話題は自然と、チェックアウト後の交通手段の話になりました。

 老夫婦は、その晩ももう1泊されるご予定とのことだったので心配はありませんでしたが、みちょるびん母子やおばさん親子は、これからチェックアウト。
 旅館の人が駅に問い合わせるなどして調べてくださったところ、幸い、みちょるびんたちが予定している黒川温泉行のバスは、通常とおりの運行を予定しているということでしたが、おばさん親子が乗車を予定していたJRについては不通になっているということでした。

 おばさん親子とは、旅館出発の送迎バスでもまた乗り合わせることになり、JR駅に向かうおばさんたちとは別れ、みちょるびんたちは先にバスセンターで降ろしてもらいました。
 おばさん親子はJR駅で列車の復旧を待つことに決めたようでした。

 みちょるびんはもともと、バスの出発の時刻までは、湯布院の街を観光するつもりでいたので、大雨で予定が狂ってしまい途方に暮れましたが、まだバスが通っているだけマシでした。
 それに、歩いてすぐのところにマッサージ店が見つかり、マッサージを受けながら待ち時間をつぶすことができたのも幸いでした。

 そうやって、バスの出発時刻に合わせてバスセンターに戻りました。

 そしてバスセンターでもまた、あのおばさん親子に会いました。
 結局、この時間になってもJRが復旧する見込みがないため、あきらめてバスを乗り継いで帰ることにしたということでした。

 みちょるびんたちは、おばさん親子に見送られながら、湯布院を後にしました。
 昨日会ったばかりの人たちでしたが、互いに手を振り合って、別れを惜しみました。
 なんだか、不思議な気持ちがしました。

 無事に到着した黒川温泉の旅館では、大雨の影響でキャンセルになったお客さんもいたという話を聞きました。

 さて、あの湯布院の「金鱗湖」で見た黒い鳥。

 気になってネットで調べたら、どうやら「カワウ」という名の鳥だったようです。
 「カワウ」は水に潜るのが得意な鳥なのだそうで、羽が水を弾かないようにできているのだとか。
 そのおかげで、水には潜りやすいのだけれど、そのかわりに、水から上がった後は、びっしょりに濡れた羽を乾かす必要があるのだそうです。

 つまり、鳥居の上で羽を広げていたのは、濡れた羽を乾かしていたということだったらしい・・・。

 不気味に、意味ありげに鳴いちゃったりしてさぁ。

 ニオワセ、禁止っ!

                             以上、みちょるびんでした!

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