こんにちは、みちょるびんです。
【ある日の日記】
友達の石ちゃんが、約束していた’ひいおばあちゃん’の指輪を持って来てくれた。
形見分けの際に、残った指輪なのだそうで、2つあった。
無色の石がついたものと、ピンクの石がついたもの。
金属部分には「プラチナ」を示す刻印があるものの、とても汚いし、偽物だと思われてきたらしい。
ところが最近になって、おじいちゃんが、「これは本物だと聞いている」と言い出したのだそうで。
見せられた指輪は、本当に汚くて、宝石鑑別の勉強をしている私も、判断に苦しんだ。
そもそも、パビリオン(石の底の部分)はじめ、クラウン(石の頭の部分)すらも汚れがこびりついていて、石が曇って見えるのだ。
それで、無色の石の方を、可能な範囲で、ティッシュでこすって磨いてみたところ、ディスパージョン(七色のきらめき)が現れた。
これは、ひょっとすると、ひょっとする。
台もプラチナだし。
台座が昔のデザインで、爪が大きく石を囲むように出ているので、それに惑わされて、私は、石の大きさがうまく読めなかったのだが、石ちゃん曰く、石の直径は、7mm程あったと言う。
と、なれば、この石がダイアモンドであれば、1カラットはあるということになる。
訊くと、ひいおばあちゃんはお金持ちだったのだそう。
そうなると、本物(ダイアモンド)である可能性も高くなってくるというもの。
もう一つのピンク色の石は、じゃあ、ルビーなのか?
グラッシー(ガラスっぽい感じ)なので、これも判断が難しい。
それに、こちらも同様に、パビリオンに付着した汚れが、本来の石の姿を隠しているのだ。
石ちゃんは、今日はこれから、宝飾展示会に出かけるらしい。
その展示会で、これらの石が何なのか、訊いてみるということだった。
結果が楽しみだ。
【それから数日後の日記】
友達の石ちゃんが、例のひいおばあちゃんの指輪を持って来てくれたので、改めて、ルーペで見てみた。
石ちゃんは、先日、宝飾展示会に行き、既に、これらが何の石なのか、結果を知っていた。
だが、私は、結果発表はもう少しだけ待ってほしいと頼んで、その前に、ルーぺで観察してみたのだった。
しかし、相変わらず汚れがすごく、判断できなかった。
結論は、無色の方がCZ(キュービックジルコニア)。
ピンクの石は、合成のピンクサファイアとのこと。
つまり、人工的に作られたサファイアということだった。
なるほど・・・。
納得がいった。
宝石鑑別の勉強をしている私ではあるが、分からなくても仕方がない。
これらの石は、ルーペだけでは正確に見分けがつかないものなのだ。
おじいちゃんの発言で、ダイアモンドやルビー(天然)ではないかと、期待が高まっていただけに、残念な結果に終わった。
とは言え、洗浄後のきれいな姿を見てみたかったので、私は、石ちゃんに、石のクリーニングを申し出て、石ちゃんから指輪を預かることにした。
【更に数日後の日記】
今日は、石ちゃんから預かっていた指輪の洗浄を行った。
しばらくの間、中性洗剤を溶かしたぬるま湯に指輪を浸けて、その後、歯ブラシを用いて磨いた。
CZ(キュービックジルコニア)は、台座の裏がオープンだったので磨きやすく、思いの外、簡単にきれいになった。
一方、合成ピンクサファイアの方は、裏が地金で覆われていたので、心配だった。
それに、こちらも、尋常じゃない程の汚れが、びっしりついていたのだ。
見たこともない汚れ。
どうやったらこんなに汚れるもんなのか。
持ち主が亡くなって、使われなくなって長いのだろうが、それにしても、頑固に、ぴったりついている。
歯ブラシを当ててみると、ほんの細い隙間から、毛がうまい具合に入ったようで、石の裏側にびっしりついていた汚れがきれいに落ちていった。
石の底をザラザラと覆っていた汚れが消えたことで、石の奥まで透けて見え、輝きが蘇ったのは、感動的だった。
自分の所有物ではなくても、自然に笑みがこぼれてしまうくらい、うれしかった。
やっぱり、宝石は、こうでなくちゃ!
見違えるように美しくなったピンクサファイアの指輪は、その石の大きさゆえに、幼い子供の頃に、女の子なら誰もが思い描き、憧れた「お姫様の指輪」のようにも見え、指にはめると、きっと、ウキウキするに違いなかった。
私は早く、このきれいになった指輪たちを、石ちゃんに渡したくてたまらなくなった。
最後に、ルビーの指輪は、爪の際の方にも汚れがこびりついていたので、翌日、もう一度だけ、ぬるま湯に浸けて、改めて磨いた。
そのおかげで、少しはマシになった。
昨日は、貴金属専用の布で、地金も磨き、黒く変色していた部分もきれいにしたのだ。
これで、文句あるまい!
【その翌日の日記】
朝、早い段階で、預かっていた指輪を石ちゃんに返却した。
石ちゃんは喜んでくれたが、私は、リアクションをもっと、期待していた。
あのひどい汚れ具合と、この蘇った美しさの’雲泥の差’を十分理解できていないんじゃないか?
これは、本当に、驚異的な、劇的な変化であるというのに!
とは言え、ピンクサファイアなんかは特に、石ちゃんも「かわいい!」と言ってくれた。
これは、以前にはなかった言葉である。
これできっと、石ちゃんも、この指輪たちを使おうという気になってくれるに違いない。
私は、この子たちが歓迎され、楽しんでもらえることが望みなので、満足である。
以上、みちょるびんでした!