ハプニング 第一次仕事イヤイヤ期

第一次仕事イヤイヤ期(その85:「心残り」編)

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こんにちは、みちょるびんです。

(前回までのあらすじ)
入社して最初の数年は、一つの夢も実現し、何の疑問もなく、仕事に励んでいたみちょるびん。そんなある日、占いで「将来、商売を始める」「自分を抑制している」と告げられ、仕事に対し、違和感を感じ始めた。学生時代に熱中していた「演劇」に活路を見出し、カルチャースクールの演劇講座を受講。そこで出会ったつるさんに誘われ、新たにダンス教室に通うことになったのだが・・・。

【ある日の日記】

 ダンスライブを観に行った帰り、ダンス仲間の数人で、飲みに寄った。
 仲間の一人の行きつけというお店で、もう少し、ゆっくりしていたかったが、終電になりそうだったので、私だけ、先に退席した。
 残念。

 仲間が連れていた友人という人は、ロックミュージックをやっているのだそうで、ロックを始めると、普段とは別人のようになるらしい。
 「人生を楽しんでいる」と、皆が、そのロックの人のことを話していた。

 私は、少し、彼に嫉妬した。
 今の私は、こんなに苦しい状況の中にいて、自分を取り巻く人間関係がうまくいっていないわけで。
 いつもそれが、心に影を落としていて、心からリラックスして楽しむことができない。
 その、ある1点のために。
 私だって、人生を楽しんでいたはずなのに・・・。

 帰りの電車の中、偶然同じ駅から乗車して、私の隣に立った若い男が、嘔吐した。

 途中で、急にしゃがみ込んだと思ったら、ぶはっと。

 彼の前に腰かけていて、席を譲ろうとしていた女性のスカートにも少しかかっていた。
 飲んでいたのか、液体がスーッと電車の床を流れて行った。

 私は、靴を汚したくなかったし、気持ちが悪かったので、素早く反対側のつり革に移動した。
 そっと、後ろを振り返ると、親切な女の人が、彼にティッシュを差し出していた。

 またしばらくしてから見てみると、今度は、彼は、流れた床の上の液体を、少ないティッシュで拭き取ろうとしていた。

 具合が悪いのだろうに、じっと座席に座っていればいいものを。
 3メートルくらいに広がったものを拭いており、彼のことが、気の毒に思えた。

 それで私は、ティッシュを取り出そうと、一旦、バッグの中を探したのだが、やめた。

 何て言って、彼にティッシュを差し出せばいいのか、わからなかったのだ。

 「そんなことはいいから、座っとけ」と声をかけたい気持ちがあった。
 しかし、公共の場で、迷惑をかけたという自責の念で、彼は自分の始末をしていたのだろうし、私の独断でその行為をやめさせていいものか、他の乗客はどう思っているのか、いろいろ考えてしまったのだ。
 それに、このタイミングでティッシュを渡すのは、逆に、彼の行為を推奨することになるような気がした。

 幸い、すぐに、自宅の最寄り駅に電車が到着し、私は、電車を降りた。

 だが、とてもいやな気分だった。
 彼が、そのまま席におとなしく座っていれば、ここまで落ち込まずにすんだだろう。
 彼の姿がとても哀れで、それに対し、自分がとても薄情に思えたのだ。

 でも、どうすることもできなかった。

  私は、ふと、学生の時のことを思い出した。

 クラスメイトが粗相してしまい、泣いているその子を思いやって、騒がず、静かに、何人かの女子が雑巾で床を掃除したのだ。

 私は、あのときも、何もできなかった―――。

                       以上、みちょるびんでした!

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