ハプニング

U To お見合い。-前編-

投稿日:2021年3月6日 更新日:

【ある日の日記】

 夜、家に帰ると、故郷にいた時にお世話になった宙海(ちゅうかい)さんから、手紙が届いていた。
 宙海さんが私に会わせたい人がいると言うので、数日前に、母・マミーから電話があったことを思い出した。
 手紙は、その用件。

 さすがにこれ以上、放置はできないと思った。
 それで、宙海さんに久しぶりに連絡し、電話で話をした。

 相手の方は、同郷で、東京で働いているという。
 いい人なので、会ってほしいということだった。
 今時珍しい、お母さん想いの優しい人らしい。

 私の死んだばあちゃんが、「自分が生きている間に、みちょるびんの花嫁姿を見たいと話していた」と言われた。
 宙海さんは、私の死んだばあちゃんを慕ってくれ、私がまだ地元で暮らしていた時も、常々、ばあちゃんのことを話題にしてくれていた。
 そんな宙海さんに、そんな風に言われたら、何か、その人に会った方がいいように思われた。
 私も、ばあちゃんに、ひ孫を抱かせたかったよ・・・。

 それで、その後、問題の味相(みあい)さんに電話した。

 なんか、ピンと来ない感じ。

 「今月、40歳になったし、そろそろ結婚したい」と言われた。
 なんか、いやな感じ。
 全面的に、’結婚’を打ち出されると、困る。
 私は、まだすぐに結婚したいわけではないと伝えた。

 とは言え、まぁ、一度会ってみないと、始まらない。
 実際に会う運びとなった。

 早速、今週末はどうかと提案されたが、土曜日は出かける予定があったし、来週ということでお願いした。
 夜はダンス教室に出かけるから、ランチにした。

 初対面なので、どういう特徴の人か、教えてもらった。
 メガネをかけて、黒っぽいスーツを着て来るらしい。
 短髪で、ちょっと伸び髪をオールバッグにしているって。

 オールバック!?
 ’勘違い野郎’だったらどうしよう。
 あるいは、’オヤジ臭い’ってパターンもあり得る・・・。

 味相さんとの電話を切ったあと、今度は、実家に電話した。

 私と味相さんは同郷だと聞いていたが、味相さんが通っていたという地元の学校は、私には、全然、馴染みがないところだった。
 何かしらの接点があれば、親しみや懐かしい気持ちが持てたと思うのだが。
 母・マミーも同様に感じたらしかった。
 父・パピーは、ますます不信感を募らせ、「(埼玉に住んでいる)おじちゃんに同席してもらえ!」と、いきり立った。
 30代、40代のいい大人なんだから、‘おじちゃん同伴’も、なかろう!!

 それにしても、やっぱり、ユーツ。
 こんなにユーツな気持ちになるとは思わなかった。

 上京する前、私がまだ就職口を地元で探していた時に、ヒトに仲介されるのが嫌で、その紹介は断り、自力で就職先を決めたということがあった。
 どうやら、今回も、あの時に似た’拒否感’がある。
 まぁ、味相さんには、関係のないことなのだが、ユーツ。

【それから約10日後の日記】

  お見合いの日。
 結局、起きたのは11時。

 ユーツ。

 お腹が痛くなり、何度かトイレへ。
 本当に、こういうのっていやだと、改めて思った。
 いい教訓だ。

 急がなきゃと思いつつ、ぐずぐずしてしまい、待ち合わせの場所に到着した時は、ほぼ、約束の時間だった。
 実は、1時間半前に、味相さんから電話の着信があったということに、その時点でようやく気がつき、電話。

 風邪で寝込んでいると言う。
 今日は、中止。

 一気に気持ちが明るくなった。
 具合が悪いと聞いた時、声の調子が明るくなったのを悟られたのではないか・・・。

 まぁ、いい。
 気分爽快。

 特に用事はなかったのだが、せっかく街に出て来たので、ちょっとウィンドウショッピングすることにした。

 靴のセールをやっていたので、買うことに。
 このところ、ずっと、お気に入りのP様(みちょるびんが大好きなイタリアンブランド)のパンスプばかり履いていたから、かかとも壊れつつあり、もう限界に来ていた。
 安物に抵抗はあるが、仕方あるまい・・・と、言いつつ、結構気に入ったりして。
 おまけに、「たたんで携行できる」とおしゃれな雑誌でも紹介されていた、フランス製の麦わら帽子をゲット。
 料金はかなり高いのだが、もう、どうにでもなれ。

 色はさんざん迷った挙句、落ち着きのある、無難な茶色にした。
 まぁ、でも、これなら、服には合せやすいだろう。
 近々出かける予定の、国内旅行を意識しての買い物であった。

 それにしても、今日の会合がキャンセルとはね・・・。

 19歳の時の初デートでは、漫画のような展開だが、私が交通事故(!)に遭ってしまい、デートはお流れになったんだよね。
 負傷し、動けなかった私は、当時まだ中学生だった妹を電話ボックス(!)まで走らせ、お相手に事情を説明してもらったのだった。
 両親がいる前での電話は、さすがにはばかられた。

 「姉ハ、交通事故ニ遭ッタノデ、今日ハ、行ケマセン」。

 デートを断るために、幼い妹を使い、そんな下手なウソまでつくのかと、相手の人に誤解された出来事だった。

 私は、初デートに漕ぎつけない、そういう星の下に生まれているのか?
 何かに邪魔されている?
 逆に守られている?

 考え過ぎか。

                       以上、みちょるびんでした!

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