こんにちは、みちょるびんです。
【ある日の日記】
今日は、クリーニングおろしたての、お気に入りのロングスカートを穿いて仕事に行った。
カジュアルな中にもエレガントさがあり、グレーブラウンという微妙な色合いも気に入っている。
午前中、そのスカートに、見慣れぬシミがあることに気づいた。
赤茶けた感じ。
コーヒーとも違うシミ。
あまり見たことがないシミだった。
私は思わず声を上げていた。
いつ作ったのか、皆目見当がつかない。
今朝、家を出る時には、こんなシミ、ついていなかったと思う。
ちょうど、清水さんが、染み抜き専用の洗浄液を持っていると言うので、借りた。
「局部に洗浄液を染み込ませ、上からタオルで叩いて、浮き上がって来た汚れをタオルで吸い取る」というもの。
早速トイレに駆け込み、試してみたが、一向に汚れが浮かび上がってくる気配がない。
生地の裏側を見ると、裏にまで茶色のシミができていた。
私は不思議に思い、一緒にランチに出かけた人たちに、シミのことを訊いてみた。
今日は、同僚のご成婚祝賀ランチを開催していた。
お店の2階の座敷はとても雰囲気が良く、皆、「ここはどこだ?」と口々に言い、まるで京都の料亭にでもいるかのような’異空間’を喜んでくれた。
料理も、今日の日替わりランチには「角煮」があり、ゴージャスだった。
主賓をはじめ、皆満足してくれ、良かった。
ところで、年配の先輩に、出来たシミのことを訊くと、「クリーニング液の残りじゃないか」と言う。
だが、穿く前に、スカートのヒダのところにアイロンをかけたばかりだった。
アイロンの時には、このようなシミ、全く気が付かなかった。
いくらボンヤリしている私でも、気付いてもよさそうなものだが。
そして、別の同僚などは、カビ専用漂白剤による漂白だと言う。
こんな格好で、カビの掃除なんてしないし、私は、ますます訝しんだ。
だが、事態は、思わぬ方向で決着を見せた。
午後、職場にある食器棚のスライド天板の上で、コーヒーを淹れていた。
ふと見ると、スカートに、新たなシミが拡大していた。
ちょうど、午前中に見つけたシミと同じ高さ。
そして、その新しくできたシミの周りは、水が染みたように濡れていた。
私はまた、声を上げていた。
布きんだ!
スライド天板の出っ張りのところに、布きんが垂れ下がるようにして置かれていて、その高さとスカートのシミの位置がピタリと一致していたのだ。
実は午前中に、シミの原因を探るべく、この食器棚にも一度来て、チェックはしていたのだが、真剣には探していなかった。
まさかと思っていたからだ。
私は、もう、疑いようがないと思い、その、絞ればまだ水が滴りそうな濡れ布きんを手に取り、鼻に近づけてみた。
漂白剤の匂い。
最悪だ。
漂白剤が原因だなんて。
取り返しがつかないじゃないか―――・・・。
職場に来て、洋服が漂白されるなんて、誰が考えよう!?
こんな中途半端な仕事をするのは、清水さんしかいない!
私はちょうど、トイレで清水さんに会ったので、シミの原因は、’濯ぎ方が不十分で漂白剤が残ってしまっている’布きんのせいだったと報告した。
彼女は全く慌てる様子もなく、おそらく、布きんもそのまま放置するつもりに違いなかった。
口では「すみません」と言っていたが、本当に申し訳なく思うのであれば、第二の犠牲者を出す前に、「布きんの濯ぎ」に走るはずだ。
しかし私は、「部屋の皆のためにやってくれていることだし、仕方がない」と彼女に感謝し、彼女を許した。
それは、本当のことなのだ。
例えば、湯呑を割られたとしても、それは洗ってもらっているからなのであって、つまり、「洗っていない人」には、湯呑は「割れない」のだ。
だから、清水さんに甘えている以上、責めることはできないわけで。
「私が長く愛用している思い出のマグカップが割れたのではなくて良かった」
「体の怪我じゃなくて良かった」・・・。
そうやって、自分を慰めた。
私が漂白の被害に遭ったのは、スカートのこの特殊な、立体的に飛び出たデザインのせい。
他の人はきっと、知らずに服が布きんに触れることなぞ、ないのだろう。
気に入っていたスカートだが、さすがにもう、職場には着て来れまい。
このスカートが穿けなくなったことで、また、服のコーディネートの幅が狭まった。
また、新たに買わなきゃ・・・。
あー、高くついたなー。
結構、落ち込んだのだった・・・。
以上、みちょるびんでした!